健康と美容に関する懺悔相談(ライブ)
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
恐るべしルナである。翌朝、リュンヌはお手洗いから戻ると「....なった....。」と言って顔をしかめる。
ただ前と違うのは訴えれる相手がいることと、
脂汗まで行かない不快な鈍痛ということだ。
ルナは味がまだマシな桂枝もどきを、リュンヌに差し出す。
「....苦い。....でも、....前より、....マシ。」
リュンヌは顔をしかめながらも、ルナから差し出された「桂枝もどき」を一口で飲み下した。
かつては孤独の中で耐えるしかなかった鈍痛も、今は「予測されたコスト」として処理できる。
その事実が、腹の底の重みをわずかに軽くしてくれた。
「ほら、さっさと飲みなさい。血行を促進して、体温を少し 上げるわよ。それが今のあんたの『最適解』なんだから。」
ベッドの上で、ルナはすでに帳面を広げている。
病み上がりとは思えない手際の良さで、昨夜リュンヌが持ち帰った「おばちゃんたちの要望」を数字に変換していた。
「....ルナ、....仕事....早い。....私は、....まだ....重いのに。」
「当たり前でしょ。あんたがメンテナンスモードに入ったなら、私が稼働しなきゃ、この部屋の収支が赤字になるわ。」
いや十分に黒字だなんて言い返す知恵も元気も今のリュンヌにはない。
「....さあ、リュンヌ。痛みが引くまでの間に、昨日の『おばちゃんネットワーク』の詳細を吐き出しなさい。」
税金の取り立てまがいの質問会である。
「誰が一番の発言権を持っていて、誰が一番切実に『子供の預け先』を欲しがっていたか....。市場調査の報告会よ。」
リュンヌは、湯気の立つカップを両手で包み、温もりに目を細める。
「....リーダーは、....雑貨屋の....おばちゃん。....あと、....『引退した子』の....名前....いくつか、....聞いた。」
ルナはリュンヌの希望を聞きパンとゆで卵と水をテーブルに置く。
「教会に行くわ。あんたは今日からお休み。いいわね。私とあんたを原資として教会で資本を爆速で回転させてくるわ。」
妙な力の入りようで言う。
再起動時のルナは、相手にしたくないとリュンヌは認識する。
「あと、あの服、あんたの分買ってきてあげる。もちろんお代は貰うわよ。」
「....ルナ、....鬼....いや、....敏腕。」
テーブルに置かれた無愛想なほどシンプルな朝食。
だが、今のリュンヌにとって、このパンの柔らかさとゆで卵のタンパク質は、計算され尽くした「回復薬」に見える。
「....休み、....了解。....教会、....ルナが....荒らす....予感。」
「荒らすなんて人聞き悪いわね。停滞しているリソースを流動化させるだけよ。」
ルナは心外だと鼻を鳴らす。
「教会の女性陣だって、お布施を集める合間に休みたがってるんだから。」
例えが何故か金の香りがする。
「聖職者の慈悲と、現実的な欲求を....私が最高のレートで結びつけてあげるわ。」
ルナはそう言い残すと、銀髪を揺らして、病み上がりとは思えない鋭い足取りで部屋を出て行った。
「....私の分、....あの服....買ってきてくれる。....代金、....高いだろうけど....楽しみ。」
一人になった部屋で、リュンヌはゆっくりとパンを口に運ぶ。鈍痛はある。
けれど、自分が「原資」となり、ルナがそれを「回転」させ、誰かの生活が潤い、そして自分に新しい服とベリー味の未来が返ってくる。
「....これが、....経済....。....ルナ、....やっぱり....すごい。」
リュンヌはスープの代わりにぬるい水を飲み、腹部の重みを受け入れながら、ルナが持ち帰るであろう「戦果」を夢見て、静かに目を閉じた。
ルナは教会に入ると「二日間、お休みを頂きありがとうございました。」と丁寧に大教会長にあいさつして懺悔相談を始める。
「....ちょっと、いい加減になさい! 話の趣旨が完全にズレているわよ!」
懺悔室の格子の向こうから飛んでくるのは、罪の告白ではなく、切実すぎる「生活の悩み」のオンパレードだった。
ルナはついに、持っていたペンを机に叩きつける。
「ルナ様ぁ、聞いてくださいよ。うちのじいちゃんの腰痛、あの粉末を練って貼ったら治りませんかね?」
「罪深いことに、最近肌のカサつきが止まらなくて.....鏡を見るのが苦痛なんです、これって信心が足りないせい?」
ルナは大きくため息をつき、身を乗り出した。
「あのね、ここは薬局でも美容院でもないの。じいちゃんの腰痛は加齢と姿勢の不備!」
なんだかんだ言いつつ診断を下すルナ。
「肌のカサつきは信心不足じゃなくて、あんたの油分不足よ! 」
おおよそ神官にあるまじき物言いだが、それがウケている事に本人は気づいていない。
「....いい、聞きなさい。私がここに座っているのは、あんたたちの関節をなだめるためじゃないの。」
ルナは声を潜めつつも、鋭い口調で続ける。
「あんたたちも、ここの若い神官たちも、無理をして働きすぎなのよ。」
いやいや自分は何歳だとツッコまれそうなセリフをルナは吐く。
「いい? 肌が荒れるのも腰が痛むのも、体が『休め』と叫んでいるサイン....つまり、バイオリズムを無視した過剰稼働の結果よ。」
要は『疲れてんだよあんた』と言っているだけである。
「これを放置するのは、神に与えられた『自分』という資産に対する背信行為、いわば横領よ!」
背信と横領は同義なのだろうか?などと考えさせないルナ。言い切りゃ勝ちである。
「お、おう....横領....」
「わかったら、今日はもう帰りなさい。」
そしてセールスは欠かさない。
「その代わり、商会に新しい『レモン味の保湿粉末』と『腰痛用ハーブシップ』を早く開発するように依頼してあげるわ。」
他人の商会の商品ラインナップを勝手に決めるルナ。
「....ただし! それを買う条件は、今日一日、家の仕事を休んでしっかり寝ること。わかった?」
懺悔相談はすべからくこんなノリである。
「....あ、ありがとうございます、ルナ様!」
ルナのワンマンライブを楽しんだ観衆が帰っていく。
「....やれやれ。信仰心で病が治るなら、この世に薬師はいらないわよ。」
ルナは毒づきながらクターっとだれた。




