クソマズ粉末と被検体
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
「じゃあ、今日のお金、あんたがあいつらに襲いかかるまでの時間稼ぎ代は貰うわよ。」
ルナはささっとリュンヌの前に右手を突き出す。
「あたしが騒いだからあんた不意打ちできたんじゃね?でしょ?でしょ?でしょ?」
ルナが喚き出す。
「....う、うるさいっ! ....わかったから....!」
リュンヌはぱっちりとした瞳を吊り上げ、枕をぎゅっとルナに押しつけた。
「でしょ?」と畳みかけられるたびに、さっきまでの温かい感動が急速に冷めていく。
「....あんなの....不意打ちじゃなくても倒せた....はい。」
渋々、小さな硬貨を数枚、ルナの掌に押しつける。ふっくらした頬をこれでもかと膨らませ、ナギナタの後ろに隠れるように丸まった。
「本当、守銭奴....月じゃない....金の亡者。」
吐き捨てながらも、体は薬のおかげで大分軽い。リュンヌは不機嫌そうに、だがどこか安心したように薄い毛布に潜り込み顔だけ出す。
似非神官かと思いリュンヌはルナを見る。
「あたしになんかついてる?」ルナは聞く。
「....何でもない。」
リュンヌはぱっちりとした瞳を泳がせ、気まずそうに視線を逸らした。
目の前の少女が纏うのは、見れば見るほど紛れもなく国教ルス教の神聖な神官服。
だが、その中身はといえば、最低賃金なるものを説き、ゴロツキから「お布施」を毟り取る守銭奴だ。
「なんで....こんな....神官....?」
喉元まで出かけた疑問を飲み込み、リュンヌは不格好な相棒を抱え直した。
この国で最も崇拝の対象であり慈愛あるはずの象徴に仕えしものが、今、目の前で図々しく自分のベッドの端に腰掛けている。
「....ルス神様....寛大すぎ....。」
脂汗が引いた額を撫でながら、リュンヌは溜息を吐いた。
謎が深まるほど、この銀髪の少女との縁が、長く粘りつくものになりそうな予感に震えが止まらない。
「そうそうこれ1日に2回飲んで見て。」
ルナは怪しげな粉をまたもアイテム袋から引っ張り出してきた。
「血行、あ、うーん血の巡りが良くなってくはず。」
さっきの粉の効果を思い出したリュンヌは思い切って口にする。
「....にがっ、....まずっ!!」
リュンヌはぱっちりとした瞳を潤ませ、舌を突き出して悶絶した。
口の中に広がるのは、泥と鉄を煮詰めたような、嫌がらせ以外の何物でもない味だ。
「....これ...わざと....。」
涙目でルナを睨みつけ、ふっくらした頬をぷくーっと膨らませる。
しかし、悶える彼女の体は、先程よりもずっと深部から熱を帯び、強張っていた筋肉が解れていくような気がする。
「薬は苦いものって言うじゃん。ほら、良薬は口に….何だっけ? ま、いっか。」
ルナが適当に笑いながら、再び何か懐を漁る姿を横目に、リュンヌはナギナタを抱えなおしてベッドに倒れ込んだ。
腹立たしい。けれど、この苦みの分だけ「明日」が少し軽く思えるのが、何より癪に障る。
「そっか被検体1号、芍薬もどき効果あり、味への抵抗感なし、桂枝もどきは激マズの模様調合改良要ね。ふむふむ。」
ルナは熱心に何か書いている。
「....被検体? い、いちごう?」
リュンヌはぱっちりとした瞳を点にして、ルナが手元の手帳に何かを書き殴る様子を凝視した。
芍薬、桂枝、調合改良……聞き慣れない単語の中に混じった、自分をモノ扱いするような不穏な響き。
「....私....試した....!?」
ふっくらした頬を屈辱に染め、ナギナタを抱えたまま毛布をふっ飛ばしガバリと跳ね起きる。
だが、ルナは「味への抵抗感なし」と再び呟きながら、慈愛に満ちた(ように見える)微笑みで彼女をいなした。
「失礼ね、ボランティアよ。神の愛による臨床試験なんだから。」
言い張るルナの図太さに、リュンヌは呆れて言葉も出ない。
謎のクソまずい粉末のせいか、あんなに重かった体がかなり軽く、今や怒鳴る気力だけは有り余っている。
「....もう....絶対、追い出す....。」
「それならあたし被検体0号だしー。文句あーる?」とルナはぐっとリュンヌに顔を寄せてくる。
「....う、うぅ....。」
至近距離で迫るルナの、陶器のように滑らかな肌と碧眼の魔力に、リュンヌは毒気を抜かれて声を詰まらせた。
儚げな美貌とは裏腹に、吐き出される言葉は人買い顔負けの強引さだ。
「信者....勝手....違う。」
反論しようにも、不格好な得物を抱えたまま、潤んだ瞳で視線を泳がせるのが精一杯。
ルナの名簿という名の「獲物リスト」に載せられた恐怖よりも、グイグイと距離を詰めてくるルナの熱気の圧にリュンヌはおののく。
「....神官....じゃない。....詐欺師。」
消え入るような抗議も虚しく、リュンヌの「平穏な孤独」は、銀髪の少女によって完膚なきまでに蹂躙されている。
娘が頭痛とかで漢方薬を飲んで色々感想を言っていたのでちょっと取り入れてみました。
でもよくよく考えるとファンタジーと漢方薬って一番遠いとこにあるものだったかもですね。
ルナの暴走は次はどこへ向くんでしょうか?




