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お金は回るよどこまでも

本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、

作者が好き放題書き散らかしています。

ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。

生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。

お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。

それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。


二つの依頼を終え、報酬の銅貨とおっちゃん達から貰った自分は嫌いな青菜を持って宿に戻ったリュンヌは食事を作った。


保存用に置いていた干し肉と青菜、人参、ジャガイモにハーブを混ぜた適当なスープを作って部屋へリュンヌは持っていく。


「....ただいま。....これ、....スープ。....あと、....お裾分け。」


リュンヌは鍋をテーブルに置き、湯気の向こうで緩慢に瞬きをするルナを見やった。


普段のきっちりとした神官服ではなく、身体を締め付けない薄い青色の柔らかな部屋着。


その、どこか無防備で丸みを帯びたシルエットが、今のルナには一番の「正解」に見える。


「....その服、....いい。....来月、....私も....買う。」


「....あら、あんたもようやく『リラックス』という名の先行投資に目覚めたの? 悪くない判断だわ....」


ルナは掠れた声で言い、差し出されたスープを一口啜る。


リュンヌは嫌いな青菜をスープの底に沈めながら、ルナの様子を伺う。


おばちゃんたちの切実な願いをどう切り出すか、煮える野菜を眺めるような心地でタイミングを計っているのだ。


だが、その前にリュンヌにはもっと言わねばならない事がある。


「....ルナ....薬....ベリー味....作って。」


リュンヌは大勝負に出た気分だ。


「商会で買って来なさい。」

想定外の返しが来た。


「前も言ったわよね。タダほど高いものはないって。」


だが言葉と裏腹にそのトーンは柔らかい。


「....商会の、第一夫人....ずるい。....私だけ、....

クソマズ……飲まされてた。」


リュンヌはスープの皿を置くと、意を決してルナの顔を湯気越しに見つめる。


かつての路地裏の野良犬は、今や報酬を手に交渉のテーブルにつく一人の冒険者だ。


「....今日、....稼いだ。.....見回り、....薬草の護衛....3二つ分。だ.から、……適正価格で……取引したい。」


リュンヌは懐から、今日獲得した銅貨をルナの視界に並べた。それは「守られる側」から「支える側」への、小さな、しかし明確な意思表示だ。


「....ベリー味....二倍....あ、....三倍、....欲しい。」


ルナは呆れたように薄く笑い、その青白い指で銅貨を一つ、愛おしそうに弾いた。


「あのねえ、あの薬はあたしの手元から旅立ったの。あたしももう購入者。レモン味よ。これ。」とルナは粉末の袋を見せる。


「つまり、私達は正当な対価を改良者に払うべきなの。で、リュンヌにはまだ話があるわ。」


ルナは、なにかリュンヌに言い聞かせるような声色を出し表情を変える。


「....レモン味。....ずるい。....絶対、....爽やか。」


リュンヌは恨めしげにその袋を見つめる。


ルナが掲げる「正当な対価」という正論の前に、またしても自分の感情がコストとして処理されかけていた。


だが、ルナの表情が真剣なものへとなっている事に気づく。


「....話。....難しいやつ、....それとも....怒られるやつ?」


リュンヌは無意識に背筋を伸ばした。


お腹を労わるようなその柔らかな部屋着姿とは裏腹に、ルナの瞳には「銭導士」としての鋭い光が戻っている。


ルナは小さな紙を出す。


「なに....これ?」


リュンヌが聞く。


「ここに金額が書いてあるでしょ。薬の売り上げのうちのあんたに渡す分。金貨10枚に銀貨20枚。」


リュンヌはガタガタ震え出す。


「....これ、....国の....お財布?」


リュンヌの手が、小刻みに、しかし激しく震え始める。


紙に記された数字は、路地裏で泥を舐めていた頃の彼女なら、一生かかっても拝めないような天文学的な額だ。


「馬鹿ね、あんたの『顔』が広告塔エビデンスとして機能した分の正当なロイヤリティよ。」


今さら何?というような態度をルナは見せる。



「女性達があんたの肌艶を見て、鼻息荒く薬を大量買いしてるんだから。」


ルナは当然の権利だと言わんばかりに、鼻で笑ってスープを啜る。


「....あ、....私の、....顔....売れた。」


「そう。あんたの健康は、今やこの街の女性たちの希望っていう名の『市場』なの。その維持管理費を払うのは、経営者として当然のコストよ。」


リュンヌは眩暈を覚えた。ベリー味の粉末どころか、ベリーの農園ごと買えてしまいそうな重みが、その薄い紙きれには宿っていた。


「だから、あんたもちゃんとこの対価を貰って、自分の収入でもってきちんとした価格で、薬を買いなさい。」


リュンヌにルナは諭す様に続ける。


「それが経済を回すってのの基礎の基礎よ。やっと言えたわ、このことをあんたに。」


とルナはからかうような口調で言う。昨日より明らかに元気がある。


「あたしからじゃなくて商会で買いなさいよ。いい、あんたがお店で薬を買う。お店が儲かって店員の給料が上がる。」


この手の話になると腹痛を忘れるらしい。

ルナはテンポが上がってくる。


「店員が街で買物をする。買物したお店が儲かる。」


ようやくリュンヌはわかって来た。お金を使う事で他の人の収入につなげろとルナは言っている。


「....お金を、回す。....私が、....誰かの....ご飯になる。」


リュンヌは手の中の銅貨を見つめ、その循環を頭の中で描く。


自分がベリー味の薬を買えば、その対価は商会の誰かの賃金になり、巡り巡って今日パンをくれたおばちゃんたちの笑顔に繋がるのだ。



まさかのクソマズ粉末ベリー味は店で買えというルナ発言。ある意味正しいけどお前のレモン味は正規価格かとツッコミを入れたくなりますね。

今日はクソマズ粉末とお金の話しかできなかったリュンヌ。次は本題に入れるのか?

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