リュンヌちゃんのスキャンダル?!
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
「あの粉末をお店で売ってくれる様になって助かったよ。」
リュンヌはクソマズ粉末が生理痛薬だけでなく冷え性薬として利用されている事実に驚く。
「最近は味も飲みやすくなって。」
クソマズ粉末をそのままルナに飲まされているリュンヌには聞き捨てならぬ言葉だ。
「……味、……飲みやすい……?」
リュンヌの歩みが止まる。あの、泥と絶望を練り合わせたような「クソマズ粉末」が?
「そうよ、干したレモンの皮とかドライフルーツを混ぜた新作が出てるの。知らないの?」
「昨日買ったのはベリー味だったわよ。あ、ルナ様、新作出てるってリュンヌちゃんに言ってなかったの?」
おばちゃんたちの無邪気な言葉が、リュンヌの胸に鋭いトゲを突き立てる。
「……ルナ。……私に、……ずっと、……ハーブ入りの粉……飲ませてた。」
脳裏に、涼しい顔で「アフターケアよ」とのたまう銀髪の相棒が浮かぶ。あいつ、私を『味覚の耐久テスト』用のサンプル扱いしてたのか。
「……ルナ……あとで、……刺す……かもしれない。」
リュンヌの瞳に静かな、しかし深い怒りの炎が灯った。ナギナタの石突きが、地面をいつもより強く叩く。
「まあまあ、怒りなさんなって、リュンヌちゃん昔の野良犬みたいな時と全然違うし。」
慰めなのかこれは?とリュンヌは困惑する。
「……野良犬。……否定、できない。……でも。」
おばちゃんの無邪気な一言が、かつての路地裏の記憶を掘り起こす。
空腹と痛みで泥を舐めていたあの頃に比べれば、今の肌艶は確かに「商品価値」が高い。
「……慰め。……ううん。……単なる、……事実確認。」
リュンヌは淡々と分析する。ルナは、リュンヌという『資産』のメンテナンスを完璧にこなしていた。
ただし、その過程で『苦痛』という名の非効率なコストを、自分だけに押し付けていたのだ。
「……あいつ、……一番いいのを……独占してた。……許せない。」
ナギナタの鞘を握る手に力がこもる。薬草採取の護衛、そして農場の見回り。
今日の報酬は、絶対に自分のためだけの『甘いもの』に消してやると、リュンヌは静かに、しかし固く誓う。
「....文句....言う....。」
そう言いつつ、はっと気がついた。
考えてみたら粉末の味の工夫は商人のところの第1夫人の仕業でありルナのせいではない。
「……あ、……今の、……間違い。」
不意に、ルナと第3夫人、第4夫人騒動の時に「らいせんす」としてルナがクソマズ粉末レシピを売りつけていたのを思い出した
。味の改良という付加価値をつけたのは、商売に楽しさを覚え始めたであろうあの夫人の仕業だ。
「……ルナの、……せいじゃない。……けど、……やっぱり……癪。」
自分の手元にあるのは、相変わらずの絶望的なハーブ入りクソマズ粉末。
だが、あの日路地裏で蹲っていた自分を、ここまで「動ける資産」に仕立て直したのは紛れもなくこの薬だ。
「……薬、……効く。……だから、……余計に……腹が立つ。」
リュンヌは複雑な思いを飲み込む。悔しいが、身体はかつてないほど軽い。
「……今日は、……稼ぐ。……帰ったら、……ルナに……交渉……ベリー味……要求する。」
ナギナタの柄をぎゅっと握り、リュンヌは自分を納得させるように、一際大きな歩幅で前を見据える。
「リュンヌちゃん面白い。ルナ様に文句言えるんだ。」
おばちゃん集団はリュンヌの一言で、更にうるささが倍増した。
「……しまった、……火に、油。」
おばちゃんたちの勢いに、リュンヌは思わずナギナタを抱えて後ずさった。
彼女たちの関心はもはや薬草から「ルナへの文句」という芸能ニュースにシフトしている。
「いいぞもっと言え!」「あの子、結構ちゃっかりしてるからね!」
鼓膜を震わせる笑い声の濁流。
もはや単なるヤジ将軍と化したおばちゃんたちは、今やリュンヌを「ネタ製造機」として完全にロックオンしていた。
「……文句、……言うけど。……結局、……飲まされる。」
リュンヌは自嘲気味に呟く。主導権を握っているつもりで、いつも最後にはルナの計算式の中に放り込まれているのだ。
「……とにかく、……進む。……喋りすぎると、……肺活量の、無駄遣い。」
彼女はルナ直伝の「それっぽい理屈」で強引に話題を打ち切ると、逃げるように牧場へと続く道へ足を踏み出した。
「でも、リュンヌちゃんが受けてくれて助かったよ。」
とおばちゃんの一人が言う。
「そうそう、最近は本当に受けてくれなくてねえ。依頼。」
と別のおばちゃんがボヤく。
「大体さあ、結婚して子が出来たら冒険者引退ってないわ。」
とリーダー格の雑貨店のおばちゃんが言う。
「……引退、……もったいない。……スキル、……捨てるだけ。」
リュンヌはポツリと、ルナの受け売りを口にする。おばちゃんたちの鋭い言葉が、閉塞したギルドの現状をえぐり出していた。
「そうなのよ! 経験を積んだ冒険者の子達の方が、護衛だけなくて薬草の見分けも取り方のコツまで知ってるのに。」
おばちゃんたちの鼻息が荒くなる。
リュンヌは、複雑な気分を抱えながら護衛の依頼の仕上げに入る。
なかなかにリュンヌ強くなってます。
ルナに文句どころか対等に挑もうとするその意気は素晴らしいことです。
ただ、おばちゃんのせいで完全に芸能ニュース枠ですが。
異世界にも芸能ニュースはあるんでしょうか?
あるんでしょうね。地元の有名人の噂話とか。
さて、リュンヌはきっちり一つ目の依頼完了に目処をつけるようです。




