おっちゃんと人参と林檎
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
「おお! 嬢ちゃん、細いのに大したもんだ。よーし、お前ら! 警備の心配がねえなら、一気に終わらせるぞ!」
「おうよ!」「腰が砕ける前にやるか!」
初老の男性たちが、どこか楽しげに木槌を振り上げ始めた。
リュンヌは、ただ実直に自分たちの場所を守ろうとする彼らの背中を、静かに見守り続ける。
リュンヌが、ナギナタを右手に辺りに気を配っていると、お嬢ちゃんも休憩しないかとおっちゃんたちが声を掛けてきた。
「....ん....。」と頷き、三人と向かい合って背後が見渡せるよう座る。
「男の冒険者は派手な依頼しかなかなか受けてくれんでなあ...。」リーダーらしき男性が愚痴をこぼしだす。
「....男、....みんな、....一攫千金。....ルナの、....せい。」
リュンヌは手渡されたぬるめの麦茶を啜りながら、申し訳なさを隠すようにナギナタの石突きを地面にトントンと当てた。
「いやいや、あの銭導士様ってのは大したお人だよ。街の女たちはみんな元気になって、自分で稼ぐんだって息巻き出したからな。」
少しだけ若いおっちゃんがしみじみとした口調で茶を啜る。
「ただ、女たちは子供ができると皮肉にもすぐ冒険者とかは辞めなきゃならんけどな。おかげで、雑用は全部俺たち年寄りが請け負えるがな。」
別のおっちゃんが、節くれだった手で腰を叩きながら笑う。
「若い野郎どもは野郎どもで、銭導士様の『事業提携』だの『ライセンス』だのってよくわからん言葉に踊らされてよ。」
半分は共感、半分は呆れの混じった口調で続ける。
「地道に土を掘るより、一発当てて成り上がる方がカッコいいと思ってるらしい。」
そしてリュンヌに真顔で問う。
「....お嬢ちゃん、あんたあの方の護衛だろう? 大変じゃないか?」
「....大変。....毎日、....物書く音と、....変な粉。....でも、....お肉、....くれる。」
リュンヌはおっちゃん達を見回す。
「ははは! 餌付けされてるのかい。だがな、お嬢ちゃん。あの方がやりたいことは、結局のところ『街の若返り』なのかもな。」
リーダー格の男性は、愉快そうにリュンヌを見る。
「結婚したら女は家庭、男は死ぬまで現場、それしかない。あの方が色々言う事で、女が自分の足で立とうとしてる。」
リーダー格の男性が、遠くの青空を見上げる。
「....でも、....おっちゃんたち、....大変。」
「まあな。だが、こうしてあんたみたいな若い子が、見捨てられそうな地味な依頼をきっちり受けてくれる。」
おっちゃん達のリュンヌを見る目は孫を見るようだ。
「それだけで、俺たちはまだこの街で頑張れるって思えるのさ。....おい、そろそろ最後の杭を打っちまうか!」
おっちゃんたちが再び立ち上がる。リュンヌもまた、麦茶を飲み干してナギナタを握り直した。
「....ん。....最後まで、....見る。....誰にも、....邪魔....させない。」
リュンヌの胸の奥で、ルナがいつも言っている「QOL(生活の質)」という言葉が、少しだけ温かい意味を持って響いた気がした。
「お嬢ちゃんは、綺麗だからまたすぐ嫁にいったりしちゃうんだろうな。」
一番若そうなおっちゃんが言う。
「若い女性冒険者は、結婚して子供ができると、もう冒険者が出来ないんだよ。」
おっちゃんはリュンヌでも知っている事を繰り返して言う。
「だから、こういう依頼を受けてくれるお嬢ちゃんみたいな人が少なくてな。」
「....結婚、....しない。....ずっと、....冒険者。」
リュンヌは静かに、でも断固とした口調で繰り返した。
おっちゃんたちの言葉には、悪意ではなく「いなくなってほしくない」という切実な願いが混じっている。
それがわかるから、余計に胸がちりりとする。
「ははは、そうかい。そりゃ俺たちにとってはありがたい話だが....。」
そしてリュンヌに優しい目を向ける。
「でもな、お嬢ちゃんの相棒さんが『やめるしかない』って諦めを壊し、お嬢ちゃんがお嫁に行っても依頼を受けてくれる方が嬉しいかもな。」
リーダーの男性が、完成した柵を満足げに眺めながら言った。
「結婚しても、子供ができても、また戻ってこられる。あるいは、やめなくてもいい仕組み。」
おっちゃんは柵の向こうに何か見えているようだ。
「銭導士様なら、そんな『新しい道』の通行料まで計算してそうじゃないか!」
リュンヌは、一瞬悪寒を
「....ルナなら、....やる。....『育児・冒険者・どうじ』....とか、....作りそう。」
リュンヌは想像する。
ルナが羽根ペンをくるくる回している。
「いい? 子供は最高の長期的投資よ。でも、あなたのスキルという既存資産を寝かせておくのは損失だわ!」
ルナが冒険者が子守をしながら依頼を受諾するシステムを構築する姿を想像した。....ありそうだ。
「よし、お嬢ちゃん! おかげで完璧に直った。これはギルドの報酬とは別だ、持ってきな」
おっちゃんたちが、籠いっぱいの新鮮な葉付き人参と小ぶりなリンゴを差し出してきた。
「....これ、....いいの?」
「おうよ。傷物だが味は最高だ。病人がいるんだろ? 栄養つけてやりな。」
おっちゃん達の人気者になってしまったリュンヌです。
まあ、このしゃべりでは声を軽くかけて来た男じゃ撃沈しちゃいそうですが。
一度、こんな感じの女性と話すとどんな気分なんだろう。と想像するも思いつかない作者です。
さて、おっちゃん達の願いをルナにちゃんと伝えられるのでしょうか?




