プライベートブランド発動
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
「ふざけないで、この女が来てからこの人は私より....。」と喚き出す。
第2夫人が述懐モードに入る。
「私は想っていた許嫁がいたのです。それを....。」
主人が意図せずとも悪行を暴かれ、ボコボコにされるモードに自動搬入されていく。
「....想っていた、....許嫁....。」
第2夫人の口から漏れた悲痛な告白に、部屋の空気が色々な意味で凍りついた。
「ふざけないで! 誰のおかげでこの生活ができていると思っているのよ!」
逆上して叫ぶ第1夫人。もはやそこには大商人であり有力者の邸宅の品位など微塵もない。
商人は、自慢の「コレクション」が目の前で互いに牙を向き合い、自らにも歯向かう状況を持て余している。
そのうえに、過去の非道まで暴露されるという最悪の展開に、脂汗どころか泡を吹きそうな顔をして対応不能に陥った。
「....人の、....業。....重すぎる。」
リュンヌは耳を塞ぎたい衝動に駆られた。香油のいい香りがするはずの部屋が、今はどろどろとした人間の醜い感情で満たされている。
「まあ、なんてこと! 愛を引き裂き、金で序列を支配する....。これぞまさに、ルス教の教えに最も背く『強欲』の極みですわ!」
ルナはまるで舞台女優のように大仰に嘆いてみせるが、その瞳は一滴の涙も流さず、むしろ獲物の急所を射抜く猟犬のように鋭い。
「....ルナ、....追い込み、....エグい」
リュンヌは震えながらも、ルナがこの「泥沼の痴話喧嘩」を、制御している事に気付いた。
執事が部屋に飛び込んできた。
「ご主人様、聖騎士様が査察に来られ隠れていた用心棒達は既に縛りげられて!」と叫ぶ。
「....査察? ....縛られた?」
商人の顔が、今度は土気色を通り越して真っ白になった。
ルナが「鐘が鳴っても戻らなければ」と聖騎士に吹き込んでいたのは、単なる保険ではない。
あの場に大教会長を同伴させた時点で、これは事実上の「強制捜査」の舞台装置だったのだ。
「あら、仕事が早いわ。騎士様。....リュンヌ、あんたの『不機嫌な顔』が、よっぽど騎士様の正義感という名の投資欲を刺激したみたいよ。」
「....ルナ、....計画通り....すぎて、....怖い。」
リュンヌは執事の絶叫と、廊下から響く鎧の擦れる音に肩を震わせる。
縛り上げられた用心棒たちは、商人が誇る「物理的資産」だった。
だが、ルナが用意した「宗教的正義」という公権力の前では、ただの不良債権に成り下がった。
「さて、ご主人様。....いや、『容疑者』。執事さんまでそう叫んでいるんですもの、もう言い逃れはできませんわね。」
ルナは椅子から立ち上がり、優雅に裾を払った。そして、絶望に打ちひしがれる商人の耳元で、甘く冷たい死神のような声で囁く。
「今すぐ、第2夫人を解放し、相応の生活資本(慰謝料)を渡しなさい。」
それは少女でも神官でもない、実務家の口調だ。
「そして、私とリュンヌへの『不当な身柄拘束未遂』に対する和解金....。これを今ここで呑むなら、騎士様には次の様に証言してあげる。」
商人の弱った心にルナは錐を突き立てて回す。
「『熱心な説教の末、改心して全財産の半分を寄付すると誓った』と。」
「....はん、....半分....!?」
絶句するしかない。神官の顔をした悪魔だ。
「嫌なら、全財産没収の上で教会の地下牢という名の『非公開市場』へご案内ですけど....どうする? 損切りするなら、今が最後のチャンスよ。」
リュンヌは、騎士が捕縛に移る直前の数秒間で、相手の全人生を「買い叩く」守銭奴の後姿を見ながら、ただただ南無と心の中で唱える。
「まあ、いいわ。資産の没収は勘弁してあげる。でもね、ここからは譲らない。」
ルナはニヤニヤ笑ってクソマズ粉末を取り出す。
「....飲ませる....主人....?」
リュンヌは素直にルナに言う。
「な、はずないでしょ。プライベートブランド発動よ。」また意味不明な用語を吐くルナ。
「プライベートブランド? ....ルナ、....新しい、....詐欺?」
リュンヌは、その緑がかった怪しげな粉末を見て、同情の視線を商人へと向けた。自分が一日二回「砂と錆びた釘」の味に耐えているあの地獄を、今度はこの男が味わうのだ。
「失礼ね、これは『聖女の慈愛が詰まった、心身を浄化する聖なる粉末(PB商品)』よ。」
ルナは苦笑しつつリュンヌに言い返す。
そして、第1夫人と第2夫人を見ながら言葉を続けた。
「この粉末、2種類はね。『月のもの』の薬。」
「月のもの」という言葉に、第1夫人の肩がびくりと跳ねた。ルナは獲物を定めるような目で、彼女の苛立ちの裏にある「焦燥」を見逃さない。
「私とリュンヌが体を張って検証済みよ。まあ、リュンヌは被検体1号としてかなり貢献してくれたわね。」
誇れる内容かはわからないが事実だ。
「....最近....私だけ....ずっと....飲まされてる....気が....っ。」
リュンヌのボソッとした抗議を、ルナは華麗にスルーする。
「いい? 奥様。イライラして夫に当たり散らすのは低レベルなリスク管理。」
立て板に水の様に第1夫人相手に、ルナの言葉が流れていく。
「この粉末で体調と血流をコントロールし、常に冷静な『市場判断』ができる女になりなさい。」
あろうことか聖職者が夫婦の不和を更に煽る。
うっへえ、私の脳内はこんなドロドロしかないんかいと苦笑するような内容になってしまいました。
お金を搾り取る展開ではなくって、ちょっと違う感じにしたかったんです。
だってQOLですからね。贅沢=QOLではないのです。
ルナの商談は上手くいくのでしょうか?




