個人的な商談
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
ルナの毒々しい計算高さとは裏腹に、部屋には神々しいまでの会談の空気が流れていた。大教会長は満足げに頷き、ルナに席を勧める。
「さて、ルナ同志殿。本日はどのようや御相談かな? 例の『熱心な篤志家』....いや、少々度の過ぎた求婚者に困っておられるとか?」
「早くもご存知ですか?流石でございます。大教会長さま。ただ、私はまだこの様な事態になっても構いませんの。」
ルナはまずは大教会長を持ち上げ、自らは大丈夫アピールから入る。神官を娶るつもりで教会に大金のお布施をしたと読んでの行動だ。
「聖職者の身にて、そもそもルス神に仕えし身に求婚とは神罰が当たりますよ。と言い切れば済みますので。」
「ただ、私の隣におりますこのリュンヌは、まだ信仰の道に入りたての汚れなき魂....。」
ルナは戸惑ったかのような表情を織り交ぜる。
「彼女の将来を思えば、そのような不埒な『市場介入』は看過できませんの。神の教えに従い、迷える羊に『正しき対価』を教えねばと....。」
ルナは悲しげに瞳を伏せ、祈るように胸の前で手を組んだ。ルス教の教義では、神職への不当な圧力は厳禁。
ルナはその盾を完璧に使いこなし、自分たちの立場を「守られるべき正義」へと着地させる。
「....(....言い方、....詐欺師。)」
リュンヌは隣で、ルナの言語魔術に驚嘆していた。
ルナの言っていることは「あのおっさん、神罰案件だから徹底的に絞り上げるわよ」という強喝に近いものだ。
しかし、大教会長の耳には「迷える信者を救済するための聖なる指導」として届いている。
「左様ですな。信仰を盾にした強引な求婚は、まさに神の庭を荒らす行為。」
大教会長は大きく頷く。若い女性神官を妾にするというのはお布施の額に関係なく許せないらしい。
「件の男は街の大商人かつ有力者ではありますが、少しばかり『お布施』による免罪に慣れすぎているようですね。」
大教会長が身を乗り出した。ルナの瞳の奥で、成金おじさんの商業圏という名のターゲットマークが、鋭く光った。
「まして、リュンヌを第4夫人、私を第3夫人などと婚姻に順位など....。」
と言いつつわざとらしく大教会長と騎士の前に文を滑らせる。そう、有力者故の傲慢故の見た目に騙された典型的ミスをルナは突く。
動かぬ証拠を出して聖騎士に任せると大教会長と騎士は踏んだ。
だが、そこから変な方向へ転がり出す。
「明日、直接、お約束の時間にお断りに参ります。あのように熱心な....ええ、『熱心な』お誘いを放置しては、主の慈愛に反しますもの。」
ルナの宣言に、執務室の空気がわずかに凍りついた。大教会長は驚きに目を見開き、入り口の騎士は「なんと勇敢な....。」と感涙に咽んでいる。
だが、リュンヌだけは知っている。ルナの瞳の奥で、算盤の珠が音速で弾ける「カチカチ」という幻聴を。
「....直接? ....斬るの?」
リュンヌ暴走であるが、もはやこの発言も、ルナに忠実であるが故にとしか大教会長と騎士には聞こえない。
「物騒なこと言わないで。これは『不採算部門の直接整理』よ」
ルナはリュンヌを制し、大教会長に向かって淑やかに微笑んだ。
「順位をつけて女性を測るなど、神が与えし個の尊厳への冒涜です。」
誰が聞いても納得するであろう内容だが次がぶっ飛んでいる。
「その傲慢という名の『負債』を、彼が支払える額まで清算して差し上げなくては。」
つまり、直接乗り込んで相手のメンツを粉砕し、慰謝料代わりの「お布施(寄付金)」か何かかわりのものを合法的に毟り取るという宣戦布告だ。
大教会長は、そのあまりの「熱意」に気圧され、「よ、よろしい。教会の名において、公式の『面会』として整えましょう」と承諾してしまった。
騎士の保護、教会の公認、そして相手の傲慢という名の弱点。
全てを自分の盤面に揃えての行動。
「....ルナ、….悪い顔。....おっさん、....南無。」
リュンヌは、明日の戦場が血の流れない(が、財布の中身は空になる)地獄になることを確信し、そっとルス神に同情の祈りを捧げる。
「いえいえ、大教会長さまにそのようなご迷惑をおかけするわけには参りませんわ。そのために常にリュンヌが私の横に控えておりますの。」
ルナはその場の他の面々が思いもつかない事を言い出した。
「....ちょっと....むちゃ....くちゃ。」
リュンヌは胃のあたりをさすりながら、冷や汗が止まらなかった。
教会の公式な支援という「安全資産」をあえて断り、敵陣へ自ら乗り込むなど、冒険者の勘が「生存率低下」の警報を鳴らしている。
だが、ルナの狙いはそこではないのだ。
ルナさん、始めての教会訪問は、まさかのラブレターの発信元のおっさんとの会談許可要請。
無茶苦茶な事を普段言えない作者の気持ちが入っている状況になって参りました。
さあ、教会でルナさんは何を更に言うのか?
リュンヌのお腹は大丈夫なのかな?




