お客さまのお声
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
「あんたは、美少女なの。リュンヌはいい加減自覚しなさい。あたしのボディーガードなんだから。」
ルナが自分の事のようにさえずる。
「違う....それ....ルナ。」
首を横に振るリュンヌの頑なな否定は、もはや様式美ですらある。
だが、市場の男たちの視線は、ルナの神々しさとは別の、守りたくなるような彼女の危うい愛らしさに釘付けだ。
「謙遜も度が過ぎると嫌味よ?」
ルナは呆れ顔で、リュンヌの頬を指先で小突いた。
紅を差され、淡く色づいたその肌が困惑に揺れる様は、着飾った少女がここを歩くよりよほど周囲の独占欲を煽っている。
本人の無自覚が、最凶の誘引剤として機能している事実に、ルナは内心でほくそ笑んだ。
小麦粉の類を売っている、露店のおばさんがルナに声をかける。
「神官さま、神の御慈悲の粉ありがたいねえ。けど味がねえ。なんとかならないもんかね?」
「神の御慈悲の粉」は、ルナが「生理痛(コスト増)」を主たる対象として作った、薬効と引き換えに味を犠牲にした、激マズ粉末と思われた。
おばさんの切実な嘆きに、ルナは一瞬だけ引きつった笑みを浮かべた。
「....味覚の試練もまた、信仰を深めるスパイス。そうでしょう?」
ルナは横に立つリュンヌの肩を抱き寄せ、その透明感あふれる美貌を「エビデンス」として突き出す。
「見て、この子の輝きを。あの激マズ粉末を摂取し続けた結果、路地裏の脂汗が嘘のような健康体よ。」
ルナは自分に酔い始めて歌うように言う。
「これぞ神(と私の管理)による奇跡! 多少の不味さは、将来への先行投資と思えば安いでしょ?」
いきなり「激マズ粉末による人体実験の成功例」として晒し者にされたリュンヌは、魚の包みを抱えたまま考え込む。
おばさんの言葉は違う、多分自分の為に発言していないのではとリュンヌは推測する。
「....ルナ....おばさん....多分娘さん....」
リュンヌの断片的な言葉に、ルナは瞬時に状況を紐解く。
あの激マズ粉末――もとい『桂枝もどき鎮痛剤』を、おばさんは愛娘の健康のために買ったのだ。
「そうなの、子供が飲めないんだよ!」
おばさんの切実な叫びに、ルナの脳内算盤が高速で弾かれた。不評は放置すれば損失だが、改善は新たな「付加価値」を生む。
「....味の改良、....必要。」
リュンヌの小さな呟きが、ルナの「商売人魂」に火をつけた。彼女は不敵に微笑むと、おばさんの手を力強く握り返した。
「分かったわ。顧客満足度の向上(CS改善)は私の信条よ。リュンヌ、分かったわよ。新レシピの開発(R&D)会議ね!」
「おばさんはったい粉貰うわよ。」とルナはまず改良材料その1を買う。
思わぬことにおばさん以外にも激マズ粉末信者が多い。
ルナは「マーケットの期待値が爆上がりね!」と鼻息荒く、おばさんから小麦粉の袋をひったくった。
周囲からは「神官様、うちの爺さんもあれで腰が....」「味が良くなればもっと買うよ!」と切実な声が飛ぶ。
ルナは全能感に酔いしれ、眩いばかりの営業スマイルを振りまいた。
「当然よ!このジーニアス・ルナ様が、QOL爆上げの神粉末を降臨させてあげるわ!」
熱狂の渦中、一人取り残されたリュンヌは、自分の時だけ一度「毒を食らわば」と言い放った守銭奴神官を思い出し、ポツリと溢した。
「....私だけ....態度....違う。」
それは、甘えと諦めが入り混じった、小さな、けれど確かな抗議だった。
生理痛の薬のはずが、一般的な鎮痛薬としてや冷え性対策にも使われている事が判明した。
ルナはニヤニヤしつつ今度はハーブの店でミントとかセージを買う。
「....はちみつ....混ぜる....。」リュンヌが提案する。
「無理ね、保存が効かないし。」ルナに即時却下を食らう。
リュンヌは嫌な予感がする。
「....味見...誰?」
ぷくーっと頬を膨らましつつ尋ねる。
一縷の望みとともに。
「それは愚問ね。現場のフィードバックが一番の近道よ」
ルナはハーブの束を抱え、獲物を狙う鷹のような目で相棒を凝視した。
ミントの清涼感とセージの独特な香りが鼻を突くが、肝心の「激マズ粉末」の土臭さを消せるかは非常に心許ない。
リュンヌの細い肩が、最悪の予感に震える。
「あんた以外に誰がいるのよ。この『先行投資』を無駄にしないためにも、強靭な胃袋と素直な舌が必要なの。」
一縷の望みは断ち切られた。
「....ほら、期待してるわよ?」
ルナの容赦ない微笑に、リュンヌは市場のど真ん中で逃げ場を失う。
「まあ、でも今日はあんたも頑張ったし、あれ買ってあげるから付き合いなさい。」
ルナは偉そうにクレープの店を指す。
「....うう....ずるい。」
甘い香りの誘惑に、リュンヌの鉄の意志(と胃袋)はあっさりと陥落した。
ルナは勝ち誇ったようにクレープを二つ買い、一つを相棒に押し付ける。
二人が背を向けた瞬間、人混みの影で少し小綺麗な格好の少年の視線が鋭く光った。獲物を見定めるような不気味な熱量。
自分が美少女って無自覚な子っているんでしょうか?
普通はそうじゃないよなと思いつつ書きました。
絶対ずっとかわいいとかかっこいいって言われてるよ。
自覚するって。
さて、ストーカーらしきのが現れました。不穏ですねえ。
作中のクレープは生地のみの素朴なお菓子設定です。




