ビジュアル·インセンティブとワンポッド·イノベーション
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
「自炊よ、自炊! 」
リュンヌの気持ちなどそっちのけでルナは言う。
「宿の食事なんて原価率の塊なんだから、自分で市場へ行って旬の素材を『バリュー買い』したほうが栄養価もコスパ最強に決まってるでしょ?」
「ばりゅーってなに? 」と聞く気力すらリュンヌに与えない勢いのエネルギーがルナからほとばしる。
「余ったお金で明日のおやつも買えるわよ。私ってば、最強コストカッター.ううん、経営者!」
ルナは銀のチャームをチャラつかせ、自分の冴え渡った頭脳を讃えてピーチクパーチクとさえずり続けている。
リュンヌはナギナタをベッドの脇に立てかけ、ふっくらした頬をこれでもかと膨らませた。
「....結局、動かされる。….お腹、空いてるのに。....天災は、ルナ....っ」
「天災とは失礼ね! 救済よ、救済! ほら、ボディーガード。私の財布を守る仕事が待ってるわよ。行くわよ、はやく動く!」
「....もう、嫌....。部屋居たい….」
引きずられるリュンヌ。彼女の脳内では、もはやルナは「高位神官」ではなく「猛烈な勢いで小銭を回すやり手店主」に書き換えられていた。
意外にもルナは市場では大人しかったが、理由は明白だ。見た目と神官服で口を開かずとも微笑むだけでオマケがついてくるのだ。
リュンヌは果物や野菜、一番安いが新鮮な鳥肉と少しの調味料を買うと宿に戻る。
リュンヌは慣れない市場の活気に当てられ宿の部屋で唸っている。
「....うぅ、もう、だめ....。人が、多すぎる....っ。」
リュンヌは部屋に戻るなり、ぱっちりとした瞳を回してベッドに倒れ込んだ。
市場の喧騒、商人の威勢の良い声、そして何より『黙っているだけでタダで物が手に入る』というルナの魔性。
リュンヌはあまりの今までとの常識との違いに精神的なエネルギーを根こそぎ持っていかれた気分だ。
「ちょっと、しっかりしなさいよ。これぞ『ビジュアル・インセンティブ』。」
ルナは横になったリュンヌの背中を軽くペシペシする。
「高位神官の威光を最大限に活用したコストダウンよ。喋る労力すら省く、これぞ究極のタイパよね。1.5倍速。」
ルナはホクホク顔で、抱えきれないほどの「オマケ」が詰まった袋をテーブルに置いた。
リュンヌは頬を枕に沈め、恨めしそうにルナを見上げる。
「....ずるい。....ルナ、立ってるだけ....。私、荷物持ち....。全然、良くない....っ。」
「何言ってるの、あんたの筋肉への『負荷訓練』を兼ねてるんだから、むしろお得でしょ?」
ルナはいい気なものである。
「ほら、唸ってないで。台所借りてきたから、サクッと作るわよ。あんた、火おこしくらいはできるわよね?」
ルナは鼻歌交じりに調味料を並べ始めた。
リュンヌは脂汗こそ流していないが、あまりのハードワーク(精神的な意味で)に、ナギナタを抱き枕のようにして固まっている。
「....私、....ジャガイモ....皮剥きなら....できる、けど....」
何となく「何もしない」と言えずつい申し出るリュンヌ。意外とお人好しである。
「採用! ほら、さっさと立って。空腹のままだと、夜の『集中講義』に響くんだから!」
「....まだ、何か....させる気…っ!?」
リュンヌの後悔の叫びが、部屋に虚しく響く。
が、ルナは無情にも階下へとリュンヌを引きずり出して行った。
意外にも宿の自炊組は多く、3つあるかまどや炊事場は満員だった。
ルナはリュンヌが剥いたジャガイモに自分が切った肉と玉ねぎと人参とキャベツを手際よく調味料とともに鍋にぶち込む。
「....何、これ。....水、....茶色い粉みたいのとそれだけ?」
リュンヌはぱっちりとした瞳を丸くして、ぐつぐつと音を立てる鍋を覗き込んだ。
彼女の知る「料理」とは、獲った肉を火で炙って野菜も一緒か生か、あるいは干し肉をただ湯でふやかすだけの野性味溢れるものだったからだ。
「これぞ『ワンポッド・イノベーション』よ。煮込むだけで素材の旨味が相互に作用して、栄養価も味も最大化されるんだから。」
ルナは相変わらず意味不明な言葉をぶちまける。
「焼くだけなんて、燃料と時間の無駄、つまりコスパ最悪なのよ。」
ルナは木べらを手に、炊事場の熱気にも負けずキーキーキャーキャーと持論を説く。
その手つきは驚くほど無駄がなく、他の宿泊客のおばさんたちも「あら、あの若い神官様、手慣れたものねえ」と感心したように見ている。
「....いい匂い。....お肉が、柔らかそう....」
リュンヌはふっくらした頬を火照らせ、ナギナタを背負ったまま(盗難防止だと言い張った)、鍋から漂う未知の香りに喉を鳴らした。
ルナが「はい、味見!」とスプーンを差し出す。
「....っ、あつ....っ。....でも、おいしい。....甘くて、深い味....。」
「でしょ? これが調合の妙よ。さあ、部屋に運ぶわよ。冷めたら『エネルギー効率』が落ちるんだから!」
リュンヌは鍋の取っ手を布越しに握り、大切そうに抱えて階段を登った。重いはずなのに、不思議と足取りは軽い。
「.....ルナ。.....あんた、....本当は...料理の神官?」
「失礼ね、私は『全ての効率化の神官』よ! さあ、冷めないうちにイタダキマスするわよ!」
二人の「自炊幸福度爆上げ」な晩餐が、今、最上階で始まろうとしていた。
最近は自炊も便利ですよね。サイトとかにレシピ載っててその通り作ると失敗もあまりない。
作者は家族でかけた日とかにたまに自炊してます。
しかし、AI勝手にカレーにしかけやがる。ムカッ!
ということでお食事を楽しむ(?)二人が次回です。




