厄介な相手
「失礼します。エリカです。」
「ああ、エリカちゃん。こっち」
手招きされ先公の机まで歩く。
「先生に呼ばれたら急いできなさい。そんなノロノロ歩かない。遅かったよ、先生待ったんだから」
「……」
「返事はすぐに。はい、だよ」
「……はい」
睨んでやろうかと顔を上げた時、後ろからひょっこりと顔を出した校長先生と目が合った。
「あれ、エリカさんじゃないですかー! どうしたの、先生のお手伝いに来てくれたの? さすが優等生だなー」
どうやら校長先生から“エリカ”は好評なようだ
「ああ、校長先生。エリカちゃんがね、授業度に答えられるからといって調子に乗って返事もまともにしないんですよ。答え合わせもしていないのに他の子に教えに行ったりね。ちょっとどうかと思って呼び出しました。」
「エリカさんが? 調子に乗る? 先生が勘違いされているだけじゃないですか? エリカさんはそんな子じゃないですし」
もしかしてこの人は味方になろうとしてくれている……?
いや、まだ分からない。決定的な一言がないと信じきれない。
「すみません、先生。たまに返事を忘れてしまう時があって。答え合わせについては、一応見せに行っているのですけど、先生は聞こえていらっしゃらない様子でしたので。」
「もう、いつも言ってるでしょ。言い訳はしない。先生もエリカちゃんのことが嫌いで怒りたいわけじゃないんだから。」
無理やり笑っていたのに、思わず無表情に戻ってしまう。
やはり小学2年生がいくら言っても伝わらないのだろうか。
(兄に相談する? ううん、兄なら学校を崩壊しかねない)
校舎や生徒に罪はない。それは可哀想だ。
「そんなつもりはなかったのですが……先生に嫌な思いをさせていたのなら謝ります。すみません。」
「先生が嫌な思いをしているわけじゃないのよ。エリカちゃんの将来が心配なだけ。このまま行くと社会で生きていけないわ」
「ご心配ありがとうございます。先生が恥ずかしくないような大人になりますね。」
自分が一番可愛く見える角度でにこりと微笑む。
「エリカさん、心配しなくていい。あなたは十分しっかりしている。小学2年生とは思えないくらいにね。先生との誤解があったんだろう、謝る必要はないよ。」
校長先生が慌てて横から口を出す。
それに反応したのか、先公が顔を真っ赤にする。
「でもっ——」
「今回はすれ違いがあったんでしょう。先生もそんなにきつく言わなくていいですよ。」
校長先生の嗜める口調に、先公は小さくはい、と返事した。
「エリカちゃん、わざわざ呼び出してごめんね。もういいよ、教室に戻りなさい」
「はい。失礼しました」
ドアの前で振り返り、ハキハキと挨拶して教員室を出る。
教室に戻りながら考える。
(あいつは校長先生に叱られたくらいでこの嫌がらせをやめないだろうな)
そのためには何をすればいいのか。
そんなことは決まっている。
(学校中を味方につけるとするか)




