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公爵令嬢、引きこもる

作者: こうじ

 エリアナ・ステールはダイオール王国の公爵家に生まれた。


 幼い頃から公爵令嬢として教育を受けのびのびと成長していった。


 そして迎えた社交デビュー、エリアナは堂々としていた。


 周囲から見れば公爵令嬢として文句の無いデビューだった。


 しかし、そのデビューの社交パーティー以降エリアナは表舞台に姿を見せる事が無かった。


 お茶会は開かれる事は無いし招待状を送っても丁寧な言葉で断りの返事が来た。


 父親であるステール公爵はエリアナの事を聞かれても『まぁ、ちょっと……』と言葉を濁すばかり。


 それから5年後の貴族学院入学の時、流石に学院には来るだろう、と誰もが思っていた。


 しかしエリアナは現れなかった。


 一応在籍はしているのだが生徒は勿論教師も誰も学院内でエリアナの姿を見た事が無い。


 勿論デビューから5年経っているので勿論姿は変化している筈なのだが面影はある筈なのだがエリアナを見た、という証言は無かった。


 そうなるとエリアナに関するいろんな噂が飛び回る事になる。


 不治の病で寝たきりなんじゃないか、とか、実は実家で酷い仕打ちを受けていて監禁されているんじゃないか、とか、隣国に留学に行ってるんじゃないか、などなど。


 ステール公爵はそういう噂が出回っているのは知っているが明言はしなかった、流石に家で酷い目にあっているという噂は否定した。


「エリアナは領地でのんびりと過ごしているのでご心配はありません」と馬にまたがり乗馬を楽しんでいるエリアナの絵姿を友人や知人達に見せた。


 じゃあ、なんで社交の場に姿を見せないのか、と友人達が問うと公爵は「エリアナの意志です、何度も話し合いをした結果です」と言った。 


「……という訳で絵姿を見せたんだが問題は無いか?」


「絵姿でしたら、特には……」


 ステール公爵家で公爵はエリアナと話していた。


「本当に申し訳ありません……、公爵家の娘としてお役に立てなくて……」


「いやいや、エリアナは色々貢献してくれているじゃないか、私を含めて屋敷の者や領民はみんなエリアナを認めている」


「そうですよ、お嬢様。他人がどう言おうと私達は味方です」


「ありがとうございます……」


 そう言ってクスリと笑うエリアナ。


「しかし、デビュタント直後に『社交なんて無理ーーっ!!』と絶叫した時は驚いたぞ」


「あの時はずっと緊張していたしドレスも重かったし人が沢山いるしでパニックになってしまったんですよね」


「お茶会のお誘いの手紙が来たら汗が止まらなくて心配しましたよ」


「手紙を見た瞬間にデビュタントの時の緊張が蘇ってきちゃって……、これはもう社交の場に出るのは無理だな、て諦めました」


 エリアナが社交の場に出なくなった理由、それは社交の場でのプレッシャーによるストレスが原因だった。


 勿論エリアナはその時までは公爵令嬢として隙を見せず堂々とする筈だった。


 しかし、慣れないドレスだったり会場内の独特の雰囲気や周囲の視線がエリアナを追い込んでいった。


 大きな失敗はしなかった物のエリアナにとってトラウマになってしまったのだ。


 お茶会の誘いが来ても緊張状態に陥ってしまうので、これでは社交に出すのは無理、と公爵は判断した。


 勿論、医師にも見せたが精神的な物であり長期の治療が必要、と判断された。


 実は王家から王太子の婚約者にどうか、という話もあったのだが事情を話して断った。


 ただエリアナは領地に籠っていただけではなく社交の場に出ない分、勉学に励んだ。


 独学で学んだ結果、エリアナは貴族学院入学時には既に卒業単位が取れるぐらいの優秀な頭脳を持っていた。


 貴族学院側は特例として在籍はしているけど通学しなくても良い、と判断した。


 時に公爵と共に領地を周り領民の声にも耳を傾けた。


 そして、公爵に進言して領民の生活の向上に力を注いだ。


 なので領民からの支持率はよいのだ。


 領民には緊張せず自然体に接する事が出来るが貴族相手となると緊張してしまう。


 緊張の余り表情が固くなり冷たい印象がついてしまうのもエリアナの悩みである。


 いずれは勿論結婚とかも考えないといけなくなるが、はたして理解してくれる人がいるだろうか。


 自分には普通の結婚は無理だなぁ、とエリアナは思った。


 ただ後に同じ悩みを持つ第三王子と意気投合して結婚、そして子供も産まれ幸せな日々を過ごす事になる。


 

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