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第一話 転入生(???視点)
コツコツ
(革靴で廊下を歩く2人の靴音)
いついらいだろう。
こんな気持ちになったのは。
嫌な記憶全部を頭のはるか隅へと追いやり、新しい場所、新しい出会いに身を投じるのは、とても新鮮だ。
今、自分は、胸の高鳴りを感じている。
自分の感情や心。
自分自身について真に理解するのは簡単なことではない。
人生という長い旅路で、自分とは何か、生きるとは何か、なんて。
たとえ、数千年の時間をかけたとしても、答えが見つかるとは限らないだろう。
そして、人はみな、それを頭のどこかで理解している。
だが、人はその旅路の中に答えや意味を求めずにはいられない。
人が作り出した価値という概念により、人は旅路で迷い、心に闇を抱く。
そんな闇を、長く生きてきた私でも、今日という日は朝露が陽の光に照らされたかのようにキラキラして見えた。
ガラガラ
(戸を開く音)
「みんな、おはよー。
今日は転校生を紹介します。
さ、入っておいで。」
担任の教師の手招きと呼び掛けに応え、私は教室へ足を踏み入れた。
「おはようございます。」