97話「お姫様だっこ?」
荒神業魔が撤退した後……毒の沼地がシーンとした沈黙に満たされてゆく。
併せて、華白の瞳が青色に戻って、猛毒によるバフ効果時間が終了した。
「……あッ。こんなこと、してる場合じゃッ」
ようやく我に返り『カケルの安否』に意識を集中させる。
(勝利の余韻に浸ってるヒマはないかも。カ、カケルは?! )
「か、カケルううう~! 」
今さら焦ってもおそい。荒神業魔との戦いで、タイムリミットを完全にオーバーしていた。
胸を不安&恐怖で一杯にさせながら、毒の沼地の奥へ。
カケルが落下した地点へたどり着くものの、彼の姿はどこにも見当たらない。
(ああ! 多分、カケルの体……沼地の底まで沈没しちゃってるかもッ)
華白は「カケルが沼地の底にいる!」と予想し、毒泥の中へ両手を突っ込む。
「はやく、はやく! この沼からカケルを救出しなくちゃ」
手探りで毒泥の中を探る、が……彼女の手がカケルに触れることはない。
(ももも、もしかして! カケルの体、丸ごと溶かされたんじゃ……)
「かみさま、神さま、神さまああああああ! 」
涙目になりながら、毒沼の奥の奥へ手をひたすら伸ばし続ける。
ーーそのときーー
「に、人間っぽいの、掴んだかも……」
華白の指先が、身に覚えのある布生地に接触。彼女は「?!」と青い瞳を見開き、ソレ(布生地)を引っ張り上げた。
「耐毒軍服の袖ェ?! カケルの……かも」
つまる所、カケルの右腕が毒泥の奥から出てきたのである。
「もうちょっとの我慢かも。いま、助けてあげるから! 」
過呼吸になりながら、カケルの右手さらに持ち上げてみせる。
すると、カケルの頭と胴体が沼の中から浮上してきた。
彼の状態は最悪の極み、毒の泥がガスマスクの割れたレンズから溢れ出し、耐毒軍服はズタズタに引き裂かれ原型すらも失われている。
「は、はあっ……ハア」
(わたしの! 肉壁になったせいで、こんな目に……)
華白はカケルの体を抱き上げ、150㎝のショタ男を『お姫様抱っこ』してから、彼の肩を揺さぶりながら枯れた声で叫び続けた。
「カケル! カケル!! カケル!!! 」




