6話「女神さま…ショタにフラれてしまう」
ルルナは外野の二人(華白と翼)を気にせず、カケルの返事を待つ。
…しかし…
「いりません」
愛野カケルは一生に一度とない女神からの贈り物を、たった一言で断った
「…………は?♪ 」
誰も予想できなかった展開に、ルルナの口から間抜けな声が漏れる。
当然、外野の二人(華白と翼)も驚きを隠せない。
「え、えぇ……」
(雑用兵が、女神さまの好意を断るって…流石に、ヤバいんじゃ…)
また、翼はイケメン面を鬼の形相にして、屈強な拳をギュッと握りしめた。
「オマエ、いい度胸だな」
だとしても、カケルは顔色一つ変えぬまま、格上の女神に己が信じる道義をぶつけた。
「そんなモノは力のない人々を守るためにあるんです。ボクじゃなくて、子供や老人たちに譲ってあげてください」
「……なるほど。カケルさん、貴方の戦う理由が分かりましたわ。貴方は……弱者のために戦っているのですね♪ 」
「そうです。逆に、こっちが聞きたいです。希望の女神が戦う理由を…」
「わたくしの使命ですか? 本来なら、有象無象に心の内を明かすメリットはありませんが~カケルさんは特別です。教えて差しあげましょう」
希望の女神が戦う理由、それは…
「全宇宙の正義を貫き通す! ソレが、わたくしの『戦う理由』ですわ♪ 」
「せ、正義ぃ?」
ギャラリーの華白は、ルルナが唄う神スケールの目的に仰天してオウム返しする。
「すべての宇宙上から悪を『消毒』し、清浄なる世界を完成させる。それが『正義の味方』としての、わたくしの真実ですわ♪ 」
「消毒、か…七神さま。ボクは違うと思います」
「一般人から正義を否定されるとは……傷つきましたワー。では♪ 今度は、わたくしが問う番です……愛野カケルさん、アナタの『戦う理由』を」
150㎝のショタ男と完全無欠の女神。お互いの視線がバチバチとぶつかり合う。
「誰かを助けるのに…愛とか、正義とか、希望とか…そんなキラキラした幻想はいらない。ボクは……」
カケルは逃げも隠れもせず、1人の人間として胸に宿した想いを告げた。
「今、泣いている誰かを…なんてことない『欠落した世界』を助けたいんだ」
「……失敗作や出来損ないのために、戦うと仰るのですか?! なんと、愚かな……」
ルルナが怒りと嫌悪感が混じったような表情を浮かべる。
………と、不愉快な沈黙が連鎖してゆき、華白は心の中で「ヤバい!」と声を裏返した。
(何なの~この! 爆発寸前のダイナマイトを握ってる感じィ! )
案の定、華白が危惧した通り、翼の怒りが沸点に達してしまう。
「好きに言わせておけば! 一般人如きがッ、七神さまの正義を愚弄するのか! 」
翼が主(希望の女神)を馬鹿にされた! とイケメン面を噴火させ、カケルへ詰め寄って鉄拳制裁の姿勢を構える。
(生意気言ったから、カケルが粛清されちゃう?!)
華白は条件反射的に、幼馴染のピンチを探知して…
「やッ、やめてへェ~」
ヘナヘナな声を上げながら、カケルと翼の間へ介入した。自ら170㎝の肉壁になって、150cmの男を庇った。
翼は華白に行く手を妨害され、苛立ちつつも拳を引いた。
「華白一等兵……こんなヤツを庇うのかよ?」
極めつけに、華白は膝を落し正座をしてから、なめらかな両手を地に這わせてから……
「め、女神さまのお考えに…ケチをつけてしまい…申し訳ございません~代わりにぃ、わたしが懲罰を受けるかも」
茶髪の前髪をコンクリートの地面に擦りつけ、お手本のような土下座を披露する。
そんな自己犠牲的が届いたのか?翼が呆れながら溜息を洩らす。
「ハア、ここで下がらなきゃ、オレが悪者だな」
「ですわね♪ まあ、今回は目を瞑りましょう。彼女の健気な土下座に免じて」
ルルナはカケルの無礼を水に流し、主人公の井竜翼に敬礼した。
「さあて、と…わたくしは、仕事に戻りますわ。軍が発った後も、地下都市を守らねばなりませんので」
自らの仕事を語るルルナに、翼が敬礼を返して力強い口調で綴る。
「市民には、希望の女神が必要です。ですから、毒森攻略は我々にお任せください」
「勇敢な戦士に恵まれて、わたくしは幸せ者ですわ。これなら安らぎと共に『留守番』できます。心から祈っていますわ♪あなた方……人類の栄光を」
七神ルルナはカリスマ力全開で激励してから、この場から優雅な足取りで立ち去ってゆく、その去り際…
「ああ、最後に一つ…」
思い出したかのように立ち止まり、頬を赤く染めながら、カケルの方へ振りむいた。
「カケルさん。わたくし達は『コインの裏表』みたいですわね♪ 」
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