87話「ハーレムエンド」
カケルが生きていることに、華白は心の底から安心してしまう。
そんな彼女へ、カケルはやさしく穏やかに囁きかけた。
「心配かけちゃったね。リン……」
彼の温かな抱擁感に、華白の胸がドキドキと鼓動。恥ずかしさのあまり、華白は顔を赤らめて俯いた。
「あ、うぅ……」
「……? どうして、顔を伏せるのさ? 」
カケルは華白の様子がおかしい事に疑問を抱き、彼女の顔を覗き込んだ。
「もしかして、ケガでもしたのかい? だったら早く手当しないと! 」
「人の心配してる場合じゃないかも! お医者さんが必要なのは! アナタの方! 」
「あはは、ごめんごめん」
カケルはいつも通り気軽に笑い、沈黙した荒神業魔へ視線をながした。
「終わったね。僕たちの戦いが……」
「う、うん」
続けて、雷昂(蛾)が二人の周りを飛び回り、華白の左肩に着地してから、今後の「後始末」について言及する。
「後は、奴の『法術核を破壊する』だけだ。ソレが達成されれば、毒森はこの世界から消滅し、太陽と青空が貴様らの世界に微笑むであろう」
「多分、アイツの胸にある『法術核』を壊せばエンディングなんだよ、ね? 」
「嗚呼、法術核が失われれば、この森の基盤が崩壊してしまうからな。毒森は、貴様らにとっての過去になるだろうよ」
雷昂(蛾)の淡々とした解説に、カケルはコクリと頷く。
「ありがとう……巫女さま。スタートからゴールまで、色々と助けてくれて」
心からの感謝を伝えて、カケルは蛾(雷昂)の羽をやさしく撫でてあげた。
「この恩は、一生忘れないよ」
「ッ?! 図に乗るな。小僧ッ……それがしを口説くなど、百兆年早いわッ」
雷昂(蛾)は、彼にナデナデされて「ふ、フン! 」と羽をパタパタさせる。
「だが、その恩とやらには…期待してやろう」
そんな雷昂(蛾)の乙女声に、華白はライバル心剥きだしで食らいついた。
「なあッ! 何よお! 急に女の子になって!『蛾の怪獣』に、カケルは渡さないんだから! 」
「よく吠える馬の骨だな。どうせキサマでは『雄の扱い方』は分かるまい。小僧の面倒は、それがしに任せておけ。とくに、夜の面倒は、な! 」
「冗談じゃないかも! カケルも反論して!」
「?えっと、えっと……よろしく、お願いしま、す? 」
「もう! バカあ!」




