82話「50口径の毒弾」
「左利きか……まあ良い。右でも左でも、そ奴の仕様は揺るがぬ」
雷昂(蛾)が、覚悟を決めた華白の肩へ着地し、十弐式毒銃の解説をする。
「その毒銃は、1960年代に実在した『トンプソン・コンテンダー』を元に思想・設計された神具でな。単刀直入に言うと、一発撃ちきりの単発拳銃だ」
「??? 多分、昔の鉄砲を真似してつくった神具って感じ? 」
「歴史は重要ではない。注目する点は『一発撃ちきり』という難儀な構造だ」
「イヤな予感がするかも。まさか、この鉄砲『一回しか使えない』んじゃ……」
「フン。半分正解だな。一旦、それがしの指示に従うがよい」
その高圧的な口調に「う、うん」と頷く華白。
「まずはトリガー・ガードを引け」
「と…とりがー?ガード?」
(多分、引き金を囲ってる、鉄のパーツだよ、ね? )
疑心暗鬼になりながら、引き金を取り囲んでいる『安全部品』を指先で引く。
すると、銃身から「カチャリ…」という音が鳴り、毒銃本体がL字に折れた。
「て、鉄砲が……勝手に、変形した?! 」
毒銃そのものがL字に変形し、砲身の末端が晒され、そこから緑色の煙がムアっと立ちこめる。
「鉄砲から、煙が出てるんだけど~早速、壊しちゃったかも」
「早とちりするな。故障などしておらぬ。その煙は『冷却時』に発生する現象だ」
「れいきゃくうぅ! いきなり、専門用語?! 」
「……バカでかい『50口径の毒弾』を発射するのだ。銃への負担も尋常ではなく、一発撃つ度にオーバーヒートしてしまう。それ故、次弾を発射するためには『自動冷却』が必須になるのだ」
則ち、十弐式毒銃は一回使うたびに冷却をする必要がある。
その不便な構造については理解できたが、華白はもう一つの懸念点を抱いた。
「ご、50口径の毒弾?! そんな滅茶苦茶なモノ!持ってないかも」




