69話「ここからは負けヒロインのターン?」
こうしている間にもカケルは輸送車の中にいる。即ち、彼は孤立している状態。
「もしも、カケルが他のコボルトと顔合わせでもしたら……」
(うかうかしてられない。地面を這ってでも、カケルの所へ行かなくちゃ)
今の華白には『毒人の力』がある。
最悪、他のコボルトと遭遇しても、何とか凌げる自身があった。
なのに、さっきの戦いで膨大なエネルギーを消費しすぎてしまったのだろうか。大きい疲労感に襲われ、この場に立っているのも精一杯だった。
「ハアハア、お願い……ちょっとは仕事をして、わたしィの足…」
「フン。どうやら、その必要は要らぬみたいだぞ」
雷昂の飄々とした返事に、華白は「?」と小首を傾げる。
そしたら、ドタバタ! 足音がこちらに近づいてきた。
「リン! こんな所まで、来てたのかい?! 」
「?! かッ、カケル! 」
華白のリアクション通り、ドタバタと乱入してきたのはカケル本人。
ーー彼の手には『奇妙な銃』が握られていたーー
五体満足の華白を見て、カケルがガスマスクの中で安堵のため息をつく。
「爆発音が聞こえたから、ここまで来たけど。ホッとしたよ、君が無事で」
「わたしィは大丈夫。へ、平気で楽勝かも」
それからカケルは周囲を見渡し、猛毒の果汁が辺りに散布している事を警戒、真紅のコボルトが数メートル先で倒れていることに気づいた。
「見渡すかぎり、猛毒ばかりじゃないか。一体、ここで何が。うん? アイツって……もしかして、君がアイツを攻略したのかい?」
「う、うん。ノリと勢いに任せたら、何とかできたかも」
「信じられないよ。よりにもよって、君がコボルトを鎮圧させるなんて、しかも一人で」
幼馴染が呆然とする中、華白は真紅のコボルトを倒した過程を述べてゆく。
「猛毒の果汁を浴びたら、ね。無限に力が溢れ出して来たの。多分、わたし……この森で一番つよいかも」
「……猛毒に触れて、パワーアップか」
(カケル、リアクションに困ってる感じ? 恐がられてるかも。やっぱり、自慢することじゃなかったのかな~)
ところが、カケルはガスマスクの中で鼻息を荒げながら、小学生のテンションで華白のことを褒めちぎった。
「まるで『スーパー・ヴィラン』じゃないか! 君がそんな無双スキルを獲得してたなんて! 全世界の男子がキミを羨んでいるよ! 」
「あひひ、そッ! そうかなぁ~」
(カケルに褒められた?! 嬉しい、かも)
スーパー・ヴィラン? はともかく…カケルから『最強だ!』と賞賛されたことに、この上ない優越感が湧き上がってくる。
「これからは、わたしィが無双するから……カケルはもう、危ない事しなくていいかも」
「心強いな。ボクはせめて、君のお荷物にならないよう努力するよ」




