65話「猛毒と息を合わせて……」
「ガァアアアアアア! 」
真紅のコボルトは怒り狂いながら、棒立ちする華白へ攻撃を畳みかける。
両手左右の爪を駆使し、一閃二閃三閃と……音速を超越した斬撃コンボを発動した。
(い、一発目は下段、二発目は下段、フィッシュは……上段かも)
高性能コンピューターの如くコボルトの音速斬撃を解析&分析。
軽快なステップを奏でながら、全ての攻撃を初見で回避してしまう。
(体が軽い。コレが、猛毒ドーピングのバフ効果……)
「人間を止めちゃうのも、意外とアリ?かも」
華白は自身の覚醒に愕然とする、が……雷昂(蛾)は、彼女の耳元で唄うように助言を追加した。
「感じろ。肉体、血管、そして……細胞が猛毒と共鳴してゆくのを」
「も、猛毒と……きょう、めい? 」
……トクン、トクン、トクン……
心臓の鼓動を意識しながら、体の組織すべてに『猛毒が巡回』してゆくのを繊細に察知する。
手足をリラックスさせ、体のすべてを心強い味方(猛毒)とシンクロ。
(コレが、毒バフ人間。いや……『毒人』ってヤツなんだ)
……そして……
「多分、今のわたしなら『手ぶら』で……乗りこえられる、かも」
落ち着いた口調で呟き、唯一の武器「アサルトライフル」を投げ捨てた。




