64話「音速を置き去りにして」
ところがどっこい、これら全てのアクションが……
(ぜ、ぜんぶ。止まって見える、かも……)
華白には、コボルトの音速攻撃がスローモーションのように写っていたのである。
身体能力の変化に驚愕しながら、華白は少々の運動量で体をヒラリと翻す。
真紅のコボルトの右ストレートが見事に空振り、怪物の姿勢が前のめりに崩れてしまう。
「ギィ?! 」
初撃が失敗に終わり、真紅のコボルトは混乱しているが…今度こそはッ! と言わんばかりに、崩れた姿勢を再調整してから、獲物(華白)の首に焦点を定め、鋭い爪で斬撃攻撃を繰り出した。
「ガァ! 」
「おそい……ぜんぶ、お見通しかも」
襲いかかって来る斬撃攻撃を、華白はエメラルドグリーンの瞳で詳細に見通し、右脚を後ろへ下げてからディフェンス姿勢へシフト。
音速のスピードで動くコボルトの斬撃攻撃をじっくりと観察しつつ、必要最低限の力量で身を屈めた。
ーーーヒュン!ーー
死の斬撃が華白の頭上を通過してゆき、虚しい風切り音だけが鳴る。
安々と回避したものの、華白自身が一番「コボルトの攻撃を避けた」という事実に驚いていた。
「コボルトの攻撃は、弾丸よりも速い……のに。簡単に、躱せちゃった……」




