59話「猛毒のヤシの実」
岩壁に退路を断ち切られてしまい、華白は慎重に後ろへ振り返ってみる。
「ガァ、ギィ……」
真紅のコボルトと華白の距離は、ほんの2~3m。
「どッ、どど、どうしよう! これ以上、現実から逃げられないよ」
「現実逃避するな、馬の骨が。その節穴の眼で、周りを良く見てみろ」
雷昂の指示どおり、周りを注視してみる、と……
異質な姿形をした『ヤシの木』が、岩壁フィールドに並び立っている事がわかった。
ヤシの木は、毒々しい空に向かって真っすぐに伸び、線状の葉をユラユラと揺らしている。そして、悪魔のような果実が、木の上で異常な存在感を演出していた。
「コヤツらは『猛毒のヤシの木』だ」
「も、もうどく……の、ヤシの木? 」
「嗚呼。この木に実る果実は、すべて猛毒の塊でな。毒森の中でも上位に食い込むほど、凶悪な毒を有しておるのだ」
「このヤシの木は、毒霧や毒草よりも殺傷力抜群ってこと! そんなのに触ったら、命が幾つあっても足りないかも」
前には真紅のコボルト、後ろには岩壁&猛毒のヤシの木。
「二つの脅威からサンドイッチにされちゃうなんて、これじゃ地獄ハーレムかも」




