表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/245

3話「ショタ系幼馴染との契約?」


そして、もう一度華白の顔面がぶん殴られる……その瞬間……


「そこまでだ……」


倉庫部屋の扉がゆっくりと開かれ、一人の男が割り込んでくる。


「玄関先で、レディーの鼻を折るのは関心しないね」


 突然、男の声が割り込んで来て、リーダー女の拳がピタっと止まる。リーダー女は華白の襟首を離して、声がした方を睨みつけた。


「チッ! 愛野お! 」


 リーダー女が睨んだ先には、身長150cm程度のチビ男が堂々と立っていた。男の体格は痩せ型でも筋肉質でもない、程よく理想的な体質をしている。彼の外見は、男にも女にも見えてしまえるほど可愛く。コレが、俗にいう『男の娘』というヤツかもしれない。

 装備も一般兵士用の迷彩服で、コレもノーマルな耐毒軍服。そして、華白と同様にマーク3ガスマスクを片手に抱えていた。


「カ、カケルぅ~~」


 華白は、リーダー女の気が逸れているうちにコソコソとショタカケルの後ろへ避難する。

 ……そう…彼の名は『愛野カケル(あいの・かける)』。華白と十年以上の付き合いがある、ショタ系幼馴染だ。


 150㎝のカケルの背中に隠れる、171㎝の華白。

そんな二人を睨み、三人組リーダーが罵詈雑言を叩きつけてくる。


「王子様は、遅れてやって来るってヤツか?! 付き合い切れないわね! 」

「奇遇だね。ボクも、君たちと遊んでるヒマはないんだ。これからアンダーベースに行って『毒森攻略作戦』に備えなくちゃならないからね」


「せいぜい、ヒーローごっこに励みなさいよ。どうせ、今回の作戦も10年前と同じように、みんな全滅してハッピーエンドさ」

「君の言う通り。10年前……一回目の毒森攻略戦は失敗した。それに、毒森の魔力だって人の手にあまるモノじゃない」

毒森は、地面も草木も空だって『ぜんぶ毒』。そんな所でピクニックだって? 頭の細胞がバグってるんじゃないの?」

「狂った人間に、この世界は救えないよ。皆、糸一本の正気にしがみついて、戦ってるのさ」


ゆえに…


「人類は『荒神業魔あらがみごうまを倒して』、伊吹町の青空と太陽を取りもどす。ボクは一人の凡人として、その栄光に貢献するよ」


彼カケルの力強い宣告に、華白の胸がほんの少しだけ踊った。


「……カケル」

(十年前からちっとも変わらない。やっぱり、カケルは『わたしだけのヒーロー』かも)


 一方、リーダーはカケルの態度にイライラしながら…


「説得力皆無なのよ。馬鹿! もういい……時間の無駄だ。お前ら、いくぞ」


 二人の舎弟を引き連れて、倉庫小屋から立ち去ってゆく。舎弟たちも、カケルに対し捨て台詞を吐いてから、リーダーの後に続いた。


「ショタ男! オマエなんかが、荒神業魔を倒せるもんか! 」

「コボルトの玩具にされるのがオチさ!」


 虐めっ子たちは、カケル1人に暴言をぶつけてから立ち去ってゆく。


 華白はチビ男カケルの背中越しに、虐めっ子3人衆が立ち去ったのを確認し、ホっと胸を撫でおろした。虐めっ子たちのせいで、華白の足はガクガク。脅威は去ったものの、未だに体は震えている。


「こ、怖かったあぁ~~。死神から、ボディーブローくらった感じ、かも」

「プロレスラーの死神なんて、いるワケないだろ」


華白のコメントに呆れながら、愛野カケルは彼女へ優しく微笑みかけた。


「……やあ、リン。じゃれ合う友達は、選んだほうが良いかもね」

「友達なんかいらないもん。この17年間、ず~とソロだったしィ! ぼっち歴の年季が違うかも」

「自慢げに自虐されても、反応に困るよ」


『友達不要論』を語りながら、150cmの幼馴染を見下ろし、迎えに来た『動機』をオドオドしながら口にする。


「今日が、作戦当日だから……カケルを迎えにきた。幼馴染として……」

「送迎してくれるのかい? 気が利くね。でも、引っ掛かるな……送り迎えするだけなのに、どうして君が軍服を着ているのさ? 」


その口振りからして、華白が毒森攻略作戦に参加する事を、カケルは知らないみたいだ。


「みッ! 3日前。私も兵士登録して、カケルと同じ『雑用兵』になったの」

「君も、入隊したのかい? 質の悪い冗談だ……幼馴染を戦場に巻き込んでしまうなんて」


……華白も軍人になった。カケルは、その事実を耳にして表情を曇らせた。


「ダメだ。女の子が毒森で戦うなんて、無謀の極みじゃないか。リン、君はこの地下都市に残るべきだ」

「嫌だ。地獄の底まで、カケルをストーキングするって誓ったもん」

「意味不明な誓いを立てないでくれ。そもそも、君は銃の扱いすら教わってないだろ」

「て、鉄砲が撃てなくても関係ないもん。気持ちは誰にも負けてないもん 」

「小学生か……君は……」


子供のように我儘を連ねる170㎝の女。そんな彼女を前に、カケルはお手上げの様子だった。


「……困ったな。君は、嫌々モードに入ると頑固だから」

(よおし! このまま推せる、かも……)


 正直、戦いになど行きたくないし、今すぐ周り右してダンボールの我が家に帰りたい。しかし、ここで逃げてしまったら、カケルを守る人間が一人も居なくなる。


(だから、強引に説得して、わたしが彼を守らなきゃ!)


華白の意識は作戦終了まで、カケルを守り切る事だけに集中していた。


(もう、大切な人を失うのはイヤだ。どれだけ卑劣な手を使ってでも、カケルだけは死なせない。肉壁になってでも! 守ってやるんだから)


「わたしの同行に頷いてくれないなら、アナタと契約。いや、約束してあげるかも! 」

「約束だって? 嫌な予感しかしないけど……何だい? ソレは……」


「わ、わたしは……泣かない!!! 」


華白は青い瞳をブルブル震わせながら、何てことない『縛り(約束)』を高々と宣言してみせた。

その突拍子もない約束に、カケルは目を点にさせてしまう、が…華白の臆病かつ真剣な表情を見て「プッ」と吹きだした。


「なんとも、君らしいヘンテコな足枷だね」

「もう! こっちは真剣かも! 」

「はは、ごめんごめん。約束はともかく、君の熱意は伝わったよ。わかった……ボクの負けだ」


「わ、わたしも毒森に行っていい……やっぱダメ~とか、意地悪しない? 」

「だから、小学生じゃないって、言ってるだろ? よろしく頼むよ、リン」


「よ、よかったぁ~」

(これでカケルと一緒に毒森へ行ける!第一関門突破かなぁ、多分)


 「…これから、戦場に行くのに随分嬉しそうだね。まあ、いいや……それじゃあ、リン……アンダーベースへ送ってくれるかな?」

貴重な時間を割いて、読んでいただきありがとうございました!

気に入ってくださったのであれば、是非とも「評価とブクマ」をしてもらえると嬉しいです。

お手数ですが、時間がある時にお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ