57「毒人の究極奥義?」
絶望する華白に対し、雷昂が自信たっぷりに説明を重ねてゆく。
「よかろう。初回限定で教授してやる『毒人の究極奥義』を! 」
「ど! 毒人の…きゅう、きょく…おうぎ? 」
(すごい! 今のわたしィに、隠されたインチキ要素があるっていうの?! )
「ひ、ヒーローみたいな、ド派手な技があるの? だったら、教えてほしいかも! 」
「焦るな。落ち着いて、それがしの助言に耳を傾けろ」
『毒人の悪あがき』とやらに、期待を抱く華白。
(も! もしかしたら、毒人パワーが突破口への糸口になる、かも)
ところが、 雷昂(蛾)は彼女の望みを一言で打ち消した。
「逃げろ」
「は? 」
「8時の方向に、全力全開で逃走しろ」
「えっと~どこが……ド派手な、究極技? 」
こうしている間にも、真紅のコボルトがジワジワと距離を縮めてくる。
「ガァ、ギィ……」
雷昂(蛾)は華白に喝を入れるように怒鳴りあげた。
「負け犬のごとく、尻尾を巻いて逃げろ!っと、助言しておるのだ。馬の骨が! 」
「何よ。犬なのか? 馬なのか? ハッキリしてほしいかも!」
華白は命令されたとおり急旋回。
「ちょっとでも期待した自分を、引っぱたきたいかも! 」
真紅のコボルトに背を向けてから8時の方角へ猛ダッシュした。




