54話「鉄砲なんか、触った事すらありません」
確かに、華白は隙あらば「逃げ出したい! 」と思っている。
(ソレ以上に!、カケルが傷つくのは、もっと嫌かも……)
だから……
「カケルが息してるなら、わたしィはどうなってもいい、かも」
「リン、ダメだ。ここにいてくれ」
そうだ。10年前…カケルに下水道で救われた「あの日」誓ったのだ。
カケルの隣に立って、彼の馬鹿げた夢を一緒に叶えてみせる! と……その決意を察したのか?使い魔(蛾)が華白の肩上でパタパタと翼を羽ばたかせた。
「一緒に、ギャンブルしてくれるんだね。ありがとう。謹崎さんの使い魔ちゃん」
使い魔に微笑みかけ、装甲車の出口(後部ドア)へ……
「証明してあげるかも。木偶の棒だって、役立つって! 」
決死の覚悟で腹を括って、不安定な足取りで外へ発つ。
「リン! 」
……カケルの叫び声をバックに、地面へ着地する華白。
「この鉄砲ッ……使い方が、チンプンカンプンだけど! アドリブでどうにか! 」
心臓を高鳴らせ、震える指でアサルトライフルの引き金をひく。
ドッドドド……ドド、ド!
「そ、想像よりも反動のクセが強いかも。これが、鉄砲?! 」
華白は人生で、一度も銃を撃ったことがなかった。
案の定、アサルトライフルの照準を合わせられず、全ての弾丸が明後日の方へ飛んでゆく。




