30話「蛾の怪獣とロリ幼女ボイス」
その折……
「とある物体」が華白と荒神業魔の間に介入してくる。ソレは虹色の煙で、カラフルな煙幕の中には黄金色の粉塵がキラキラと舞っていた。
突然の妨害(煙幕)に視界を遮られ、荒神業魔の照準が逸れてしまい、触手攻撃が華白の真横を通過してゆく。
「……〇△〇?! 」
「なんなの……この煙幕、一体どこから湧いて?」
(い、命拾いした、けど……周りにあるモクモク?は一体……)
華白はカケルをおんぶしたまま、煙幕の中を舞う粉塵を見て唖然とした。
「このキラキラ。蝶々の鱗粉?コレがたくさん集まって、煙に見えてるんだ…」
『鱗粉の煙幕』に視界を阻まれ、荒神業魔が獲物(華白とカケル)を見失う。
「〇✕……✕△✕?!
「ラッキーかも。 煙幕に妨害されたおかげで、なんとかなりそう」
華白は意味不明な展開に動揺しながらも、心の中でガッツポーズをした。
この煙の正体は、謎に包まれているものの……
「よぉし! 」と自らを奮い立たせ、この場から避難しようとした。
「とりあえず、今は1秒もムダにできない。はやく敗走しなくちゃ」
……その瞬刻……
バサ! バサ! バサァ!
頭上から大音量の羽音が鳴り響き、猛烈な突風が通り抜けていった。
「羽の音ぉッ?! ……う、上からあああ?! 」
頭上から迫り来る巨大な羽音を聞いて、視線を慌てて上げる、が……その刹那『謎の飛行物体』が華白めがけて猛スピードで急降下。おまけに、その飛行物体は『昆虫の手足』をコントロールして、華白の体を安々とキャッチ(捕獲)。
「む、虫の脚。で、デカすぎかも」
巨大な昆虫の脚に、ガッチリと拘束されてしまう二人(華白とカケル)。
流れるように、飛行物体は二人を捕獲したまま上昇、カラフルな煙から飛び立ってゆく。わずか数秒で華白の視界が上空70mまで浮上した。
「飛んじゃってる?! ありえない……」
恐る恐る足元を見ると、そこには毒森の全てが永遠と続いていた。
(クレーンゲームみたく『飛行物体? 』に捕らえられて……毒森の空を散歩してるんだ)
困惑する脳内で状況整理して、華白は自分たちを拘束している「飛行物体」の正体を確認するために、ゆっくりと視線をあげた。
飛行物体の全長は6mに達し、頭部には細長い2本の触角があった。さらに、威圧感のある鋭い眼光は怪獣のソレであり、虹色の翼を優雅に羽ばたかせている。翼のビジュアルは芸術的であり、両翼が動く度に黄金の乱舞していた。
6m強の巨体、虹色の翼、2本の触角。飛行物体の正体はまさしく……
「ががが、蛾の怪獣?! 」
(蛾の怪獣なんて! マニュアル本に載ってなかったよ~)
蛾の怪獣は、華白を左の足で、カケルを右の足で拘束し、毒森の上空を我が物顔で飛行している。
「カケル。起きてッ……空の上で、寝落ちしれる場合じゃ……」
意識のないカケルにヒソヒソと呼びかけるが、彼の瞼は開かれない。
「お願い、起きて! わたしィたち、このままじゃ! 食べられちゃうよおおお! 」
華白は七十メートル上空で脚をジタバタさせ、怪獣の脚をポカポカと叩く。
……すると……
「命の恩人に対して『怪獣だの、喰うだの』礼儀を知らない『馬の骨』だな」
婉美で透き通ったロリ声が、ぶっきらぼうに罵倒してきた。
「だ、誰?! 」
(なんなの、このロリ声! しかも、こんな毒だらけの上空で?! )
「ここにいるのは……わたしとカケル。それと、蛾の怪獣だけ。ロリ幼女なんて、どこにも……」
「推理しながら、さりげなく煽るな。阿呆が」
困惑してしまう華白に「幼女のロリボイス」が呆れた口調で回答してくる。
「それがしはここだ。キサマがほざく『蛾の怪獣』とやら、だ」
「は? ……はへ? 」
予想外の返答に、華白はポカンとしながら蛾の怪獣の面をマジマジと凝視した。
「ありえないかも。蛾の怪獣が、ロリボイスで罵倒してくるなんて」
「ありえるさ。ここは毒森、理不尽な奇跡が集う神域なのだからな。後、ロリなんとやら……とか言うのを止めろ。不愉快だ」
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