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28話「毒ガス吸ってパワーアップ」

 

 毒霧が鼻と口に流れ込み、天然の毒素が華白の体内を走り抜けてゆく。


「毒霧、吸っちゃったぁ~。多分…コレって、死ぬ感じのヤツかも」


 己の死を他人事のように自覚しながら、脱いだガスマスクをカケルの頭に固定させる。


「大丈夫、ゆっくり息を吸って。わたしィのガスマスク、貸してあげるから」


 華白のガスマスクがカケルの顔に装着され、彼の痛々しい咳き込みが止まる。どうやら、華白の自己犠牲によって、間一髪、メンターの命は繋止められたらしい。

 ……しかし……

 カケルの体は全身ズタボロ。死人に片足を突っ込んでいる状態だった。


「カケルの傷、滅茶苦茶かも」

(散々、荒神業魔と毒霧にボコされたから、満身創痍になるのも仕方ない……そ、それでも~)


 深いダメージを連続で負った結果、カケルは完全に意識を失っている。


「お願い、目をあけて」


 必死に呼びかけつつ、傷ついたカケルの肩を揺さぶる。


「カケル、起きて。逃げないと」


 だが、同時に……「え?」と、自分に対して最大級の違和感を抱いてしまう。


「ウソ。普通に、息が……出来て、る」


(おかしい、かも。わたし、毒霧をたくさん吸い込んじゃってるのに)

「ぜ! 全然、苦しくないし。余裕で、息ができる……かも」


 空気中のあらゆる毒素が、華白の体を「心地よく」通り抜けて行ったのである。


「ハア、ハアハアハア……」


 どんなに毒霧を口に含めようとも、体は平然としており、それどころか……


「毒霧が、空気がおいしい……な、なんで? 」


 硫酸の血液&毒霧を吸っても平気な体。


「多分、わたしィ……化物になって」


 はげしく動揺しながら、体の突然変異を復習し一つの仮説に辿り着く、が…そうしている間にも、荒神業魔が視力を回復させをメラメラと殺意を滾らせる。


「……ッ○△□! 〇✕〇! 」


 相手の怒りを肌で感じながら、乾いた固唾を飲みこむ華白。


「やばあ。閃光爆弾の効果が終わっちゃった?! 」


(逃げなきゃ! 逃げなきゃ! 逃げなきゃ! )


 頭の中で言葉を反復させ、カケルの体を抱き上げると、彼を弟を背負うように『おんぶ』。もたつく脚を必死に動かし、前へ前! と逃走する、が……

 ドン! ドン! ドォン! と、荒神業魔が怒りMAXで猛ダッシュしてくる。


「恐竜みたいな図体してるくせに、なんて速さなのぉ~」

(ダメ! かも、カケルをおんぶしたままじゃ、追いつかれるかも)


 荒神業魔が2本の触手を振り回し、二人(華白とカケル)を追跡してくる。


「多分、や、やばい! 」


 心拍数が上昇し無意識に深呼吸。

 その拍子に、大量の毒霧を吸い込み、華白の体内に凶悪な毒ガスが染み渡ってゆく。続いて、華白の瞳が『エメラルドグリーン』へ変色した。

 瞳の色が青から緑へ変化した瞬間、周りの景色がゆっくりと流れていく。


「あ、あれ?! またスローモーション……」


(やっぱり……周りの景色が、ゆっくり流れて見える。変かも)


 また、スローモーションのように視認しているのは『景色』だけじゃなく。


(荒神業魔の動きだって、丸見え……これって、多分…)

「し、視力がパワーアップして、動体視力が急上昇してるんだ」


 荒神業魔の猛攻を事細かに認識しながら、華白は『血や体だけじゃなく、目も突然変異してしまった?! 』と心の中で絶望してしまうが…荒神業魔の触手が間髪入れず襲いかかってくる。


「ぜんぶ丸見えだけど! 体が、追いつかないッ。や! やられちゃう! 」


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