24話「チュートリアルでラスボス登場!」
「地面が震えて、る? き、恐竜が近づいて来てるの~」
「ゲホッ! そんなちゃっちいモンじゃねえ。ヤツは……」
大尉は血まみれの両手を握りしめ、憎悪を含んだ口調で吐き捨てた。
「人類の天敵種さま『荒神業魔』のご来店だよ! 畜生! 」
「「?!」」
華白とカケルは、怖じ怖じと毒密林の奥を睨みつける。
二人の恐怖を汲みとるかの如く『巨大な人影』が華白とカケルの前に現れた。
全長5m。体のすべてが異界の鉱石で構築され、『岩石の巨像』を沸騰させる外見。人体の構造は人間の解剖学的構造と類似しており、手足や胴体は人間のモノと類似。かつ、頭部の耳や鼻は醜く変異し、歯茎も露出。この巨人は悪魔すらも可愛い……と感じさせるほど、陰惨なビジュアルをしていた。彼こそ、荒神業魔。誰もが認める絶対無敵の管理者だ。
華白は予期せぬ乱入者『荒神業魔』と対峙して、絶望のあまり身をよじった。
「ヒッ、ヒィ~~」
(まだ、チュートリアルの段階なのに~ラスボスの出番、早すぎるかも)
されど、カケルは荒神業魔を見上げ、人類が倒すべき宿敵に堂々と対峙する。
「荒神ッ! 業魔!!! 」
種悪の根源たる荒神業魔は真向いに立つ蟻を見下ろして、ありったけの声量で覇者の咆哮を轟かせた。
「○×△□○×△△○○□□×××××××××△!!! 」
木が揺れ、地が揺れ、毒の森全体が打ち震える。
荒神業魔の迫力は、もはや人類のスケールから超越していた。
「格が……次元が……気が遠くなるくらい、違い過ぎるかも」
荒神業魔の咆哮が、いとも容易く華白の精神力セフティーを崩壊させてしまう。
「あぁ……足の、力が入らな、い。多分、ダメなヤツ……」
オロオロと揺らぎ、みっともなく尻餅をついてしまう華白。しかれども、カケルは動揺する素振りすら見せず、荒神業魔の真正面に踏み留まった。
「荒神業魔、まっていたよ。ボクが相手だ。かかってこい! 」
「だ、ダメ…ケンカ売る相手、間違ってるかも」
華白は地面を這いずり、無謀な幼馴染を呼び止めようとする、が……
「うッ、あ……あ」
恐怖のあまり…体も動かず、華白は些細な動作すらできなくなった。一人戸惑う華白に、瀕死の大尉が警告してくる。
「にげろ。アイツを…荒神業魔をたおせる奴なんざ……この地球上に存在しねえ」
けれども、その警告はカケルの耳に届かなかった。
「おおおおお!」
ショタ男は雄叫びを揚げ、一直線に荒神業魔へ突撃してゆく。対峙する荒神業魔は特攻してくる鼠を軽くあしらうように、岩石のような拳で彼の腹部を殴り上げた。
ド! ゴォオ!
「う、ぐぅ! 」
「カケル! 」
隕石衝突に匹敵する一撃をくらい、カケルの体が宙へ投げられ、2~3m先の地面へ頭から墜落してしまう。華白は幼馴染が蹂躙される悲劇をまえに盤面蒼白になった。
「か……カケル、カケル~」
害虫を駆除するように妨害者を化片付けてから、次の獲物へ狙いを定める。次のターゲットは必然的に、ガタガタ震えることしか能がない「華白隣」だった。
荒神業魔は「〇、□✕……」と唸り、華白と大尉に狙いを定める。
そうして、彼(荒神業魔)は岩肌のような背面から『とある異物』を造物させた。グチュグチュ、グチュ……生々しい効果音と共に2本の触手が生え、その姿形は大蛇のようであった。
ウネウネとネリ動く触手を直視して、華白の脳内に電流が駆ける。
「ソレって?! 窓辺から見たヤツと、そっくり……」
華白は直感的に把握した。
荒神業魔の触手が『装甲車を襲ったモノと同一である』と……
「あ、アナタが……装甲車を、通り魔した…犯人? 」
「〇、△□……✕」
荒神業魔は、華白の問いかけを肯定するかのように頷く。
とどの詰まり、荒神業魔が毒森北側で多目的・装甲車を横転させたのである。真相が明らかになった後、荒神業魔が調理を再開。2本の触手で華白と大尉の体を拘束し、常識離れした怪力で二人を締め上げた。




