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22話「選ばれし主人公は、失神?しました」

 

 ……一方そのころ……

 選ばれし者・井竜翼は、部下たちの愚痴をBGMにしながら、頭を抱えていた。


「クソッ! スタート地点から、出鼻をくじかれるとは」


 現在地は毒森北側から6㎞~7㎞の地点。地面も頭上すらも、毒々しい雑木林に覆われておりロケーション的には最悪だった。


(装甲車を襲撃したヤツを追って、ここまで来たが……尻尾すら掴めなかった)


 ……その上……


「毒森攻略戦のルートから、かなり遠回りしてしまったな。最高だな。クソッ」


 部下たちに見えないようコッソリと拳を握りしめ、崩れてしまった毒森攻略作戦を立て直す算段を模索してみる。


 現状の問題は『多目的装甲車』にある。


(あの装甲車こそ、作戦を成功に導く『運び手』なのだが……)


 されど、その肝心のビークルは……


「装甲車、ぶっ壊されちまったな。このザマで、どうやって『毒ノ聖花壇』に行くんだよ?」

「さあな。羽でも生えてりゃ、毒の茨道を飛び越えられるかもしれねえぜ」

「漫画の見過ぎだろ、オマエ。空は毒雲のテリトリーなんだぜ。そんな所を飛ぶキチガイがどこにいるってんだ」


 部下たちの無駄口は癪に障るが、まったくの戯言という訳でもなかった。


「毒森の、空を飛ぶ……か。あながち、的外れではない…な」

(装甲車の代わりに、飛行機などのビークルをつかえば、理論上『毒の茨道』を飛び越えていけるだろう)


「そんな…ご都合主義の乗り物など、この世にある筈もないが、な」


 手始めから『装甲車という、キーカードを損失した』訳だが、このまま悲観していても埒が明かない。


「気持ちを切り替えて、今は『できる事』に集中しなければ」


(そうだ。まだ人類は敗北していない。ルルナさまから頂いた『神具』さえあれば、いかなる困難をも乗りこえられる! )


 ーーー神具ーーー

 そのワードで胸を奮い立たせる、が……


「…しまった! アタッシュケースが…俺とした事が、熱くなってやらかしちまった」

(一番肝心の神具を、装甲車に置いて来ちまった?! )


 要するに、装甲車が横転した際。触手の襲撃者を追撃するのに集中し過ぎて、神具が入ったアタッシュケースを忘れてしまったのである。


「選ばれし者の…オレがッ!こんなケアレスミスを! ルルナさまに顔向けできん」


 翼は自分自身に憤りながら、愚痴を垂れる部下たちを睨みつける。


「お前ら、立て!今から、毒森北側へ引きかえす! 」


 急に声を荒げる隊長。困惑する兵士たち。


「井竜隊長、どうしたんです? あのチビ雑用を迎えにいくんですかい? 」

「……理由は聞くな。黙って命令に従え」


 部下の質問を叩き落とし、毒森北側の方角へ余裕のない足を向ける。


(バカ共と言い争ってるヒマはない。一刻もはやくケースを回収せねば! )


 それなのに、部下たちは「はあ」と腑抜けた溜息をつくばかり。


「初動が散々じゃねえか。やってらんねえ」

「大体、なんだよ?毒森攻略戦って、小学生が考えたみてえなネーミングセンスしやがって」

「ソレだけどよ。この作戦の名前、ルルナさまが考えたらしいぜ」

「すげえな~希望の女神って、美的センスが終わってんだな~」


 あろうことか、兵士たちは救世主ルルナの陰口で盛り上がっている有様。翼は尊敬する神を罵倒する兵士たちに対し、怒りボルテージを上昇させた。


「キサマらぁッ! 」


 ガスマスクの中で声を荒げ…凡人の分際で神を愚弄するのか!と一喝しようとした……


 ……その折……


 キン、キン♪キーン♪


「…?、なんだ? 鈴の音……か? 」


 翼の言うとおり…どこからともなく、軽やかな『鈴の音色』が聞こえてくる。


(美しい。まるで、天使の歌声みたいだな)


 幻想的な音響にウットリしている、と…


「あ、がああああああああああああああああ! 」

「クビが、クビが! あぢィいいい! 」


 突然、部下たちの様子が一人また一人と豹変してゆく。


「お前たち?! 一体、どうしたんだ?! 」


 翼は動揺しながらも、苦しみ喘ぐ部下へ駆け寄り呼びかけた。そんな努力も虚しく、兵士たちは絶叫しバタバタと倒れてゆく。


「一体、何が……起こって」


 キン、キン♪キーン♪


「まさか! この異常事態は……この鈴音が引き起こしているのか?! 」


 真相に辿りつくと同時に、翼の首筋にジリジリとした『灼熱の痛み』が走る。


「……!、グウ!!! 」


 溶岩のような熱さに連動し、唾の首筋に『鳳凰』を模様した黄金色の紋章が浮かび上がる。


「なんッ!だ……首がッ」

(喉がッ、首がッ、沸騰してやがる。脳が、爆発しそう! だ)

「い、意識が遠の……く。こんな所で、えらばれし者の……このオレ、がッ」


 灼熱の痛みに理性を焼かれて、井竜翼はその場でポトンと倒れてしまった。


「あ、がァ……ルルナさま、申し訳ございませ、ん」


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