最終話「…悲報???毒人間ちゃん、新たな戦いに巻き込まれてしまう」
頬を赤らめさせつつ、アセアセと言葉をならべる雷昂。
そんな彼女をまえに、華白はフッと噴き出した。
「今どき…ツンデレ幼女って、需要があるのかな~」
「やかましいわッ」
そよ風が流れゆき、二人の心を落ち着かせてゆく。
風に緑髪をなびかせ、華白は楽しげに微笑んだ…対照的に、雷昂は顔をそむけ頬を膨らませる。
「時間が惜しい…気に食わんが、それがしの背に乗せてやる」
雷昂が懐に手を入れ、ちっこい指である物を取り出した。
勿論、ソレは雷昂の『変身術札』。
「ソレって、変身のお札?なつかしい、かも」
「感傷に浸っている暇は一秒もないぞ。こうしている間にも、天使共は無双しているはずだから、な」
世界の現状を淡々と述べながら、術札を投げつける雷昂。
―――ピカッ
眩い光りと共に、幼女巫女の姿が『蛾の怪獣』へと早変わり。
「はへ~あいかわらず、悪顔モンスターかも」
「以前よりも、煽りの腕を上達させているな…貴様」
蛾の怪獣(雷昂)が巨大な翼をはためかせ、その圧倒的な存在感で一陣の風を巻き起こす。
「…数百年前。『希望の女神事件』で、貴様は女神の力を代償にて、この世界を救った」
「うん。わたしィは『あの日』消滅する筈だったけど、そうはならなかった…」
「一体、なんの奇跡が起こったのかは知らん。しかし、キサマは『あの日』以来、毒の女神として存在し続けておる」
「結果オーライ♪みたいに聞こえるけど。今のわたしィに、神様要素ゼロかも」
「今の貴様には、女神の力は欠片も残されていない。残っている力は毒人の力のみ」
ゆえに…と、雷昂が声を鋭くしながら警告を繋げてゆく。
「たかが毒人一人では、無敵と名高い天使軍団には到底敵わん」
…だが、それでも…
「華白隣…それでも貴様は諦めないのか?」
三代目・毒牙姫ノ尊『華白隣』は、蛾の怪獣(雷昂)ゆっくりと近づき、慣れた様子でその背中に飛び乗った。
そして、一瞬のためらいもなく、即座に答えてみせる。
「うん」
ーーーーーー
伊吹町の上には、青い空がどこまでも続いている。
太陽の光が街をやさしく照らし、雲の群れが無尽蔵の模様を描いてゆく。
蛾の怪獣は、そんな青空フィールドを、毒の女神を背に乗せながら飛ぶ。
残念ながら…二人には、美しい青空をながめる暇はない…
今日もまた、欠落した世界が『華白隣』を待っているから…




