240話「それがし達の戦いは、これからだ」
…………歩の姿が見えなくなってから、数分後……
「ああ!ヤバい、かも!」
ここでようやく、緑髪の女…いや、三代目・毒の女神『華白隣』は本来の用事を思い出した。
「待ち合わせに遅れちゃう!い、急がなきゃ…」
顔色を青ざめさせつつ、慌てて踵を返し、驚いた鹿のように騒がしくダッシュする。
「まだ間に合う。毒人の力で何とか…」
が、しかし…その抗いを一蹴するかの如く…
「『なる』ワケあるか…阿呆が」
その声に、華白は肩を強張らせつつ、出来の悪いロボットのように振り返る。
(この…愛嬌ゼロ…ぶっきらぼうな口調は…多分…)
「きッ、謹崎さん!」
まん丸瞳の『幼女巫女』が、イライラ感MAXで仁王立ちしていた。
「気安く『さん付け』するな。馬の骨が」
「謹崎さん。久しぶり、百年ぶりって感じ?」
(これぞ、懐かしの再会ってヤツだ~。相変わらず、チンチクリンだな~)
「…おい。失礼なことを考えていないか?」
「い、いやあ~そんなこと、ないですヨ~」
「フン。マヌケなヤツめ。まあ、良い…」
雷昂は、態度全開で華白の元へ歩みより『今度の作戦』について問いかける。
「今宵…我々は『魔界』へ発つ。承知しているな?」
「一応、予習してきたかも。奴隷悪魔さん達をレスキュー?しにいくんでしょ」
「妙なカナ言葉を使うな。阿呆が…」
雷昂はため息をつきながら、さらに話を進めていく。
「正直に告げると、この作戦は無謀以外の何モノでもない」
その口調には、不可能へ立ち向かうことへの不安が含まれていた。
「負け犬(悪魔)を助ける為に『それがし達二人だけ』で天使軍団と戦う?とても正気とは思えぬな」
「それでも、一緒に戦ってくれるんだ。ありがとう」
「自惚れるな。馬鹿を放置していたら、何をしでかすのか分からん。ゆえに、監視役が必要なのだ」




