238話「不審者は聞き上手?」
一方、歩はその場で座り込み、泣くことしかできなかった。
すると、悲しみにくれる歩のとなりに、緑髪の女は体育座りをする。
「泣きたい気持ち、わかる…かも」
「適当なこと言わないで。さっき、会ったばかりなのに…なにが分かるってのさ」
「ぐうの音もでないかも。でも…」
緑髪の女は戸惑いながらも、歩の横顔を覗いてやさしく囁いた。
「たまには『毒を吐き出した方』がいいかも。わたしィで良かったら、話聞くよ?」
ぎこちないが、どこか柔らかい彼女のオーラに、歩は安心して…
「……実は…」
虐められている事、父親から貰った本を取られた事、を泣きながら語った。
「はへぇ~ソレは大変だったね」
彼の話を聞き終え、しみじみと頷く緑髪の女。
「あはは…真剣に聞いてるの?でも、話したら…ちょっとだけ…楽になった。ありがとう」
「お礼は不要かも。わたしィ、相づちしか打ってないし」
彼女の体から滲みでる柔らかなオーラに、安心する歩。
「気持ちは楽になったけど、『お父さんの本』は諦めるしかないかな」
…諦める…
その台詞を聞いて、緑髪の女は青い瞳をそっと細めた。
「わたしィね…これから魔界に行くんだ」
突然、女は『魔界に旅立つ』などという意味不明な話を、展開させてきた…が…
「ホントに?!凄いや!」
歩は、突拍子もない話を真に受けた。




