234話「伊吹町2137」
…………
西暦2037年12月11日。7時30分。
誰も知らない奇跡によって『毒森浄化作戦』は成功。
街を汚染していた毒霧も、たちまち浄化されてゆき…毒森そのものが完全に消滅。
後日、人々は少しずつ地下都市から離れ…一人、また一人と地上へ戻ってゆく。
それから10年もしない内に、電気が通り、キレイな水が飲めるようになって『伊吹町』では、車や電車が走るのが当たり前になった。
……10年後……
現在の伊吹町には、毒のドの字すら残されておらず、若者や大人、子供など…多くの人々が賑わう『普通の街』として賑わっている。
……さらに、100年後……『西暦2137年』
伊吹町の片隅にて『とある少年』が、悪ガキ三人衆にタコ殴りにされていた。
彼の名前は…歩…
もうすぐ8歳になる。どこにでもいる『いじめられっ子』だ。
「おい!あゆむ!!!」
――ドガッ!
晴れ渡る青空の下『歩』はいつも通り、悪ガキ子グループに虐められていた。
「あうぅ!」
三人衆の一人が、歩の手から『一冊の本』を乱暴に取り上げて鼻で嘲笑う。
「何だよコレ?!毒神物語?!つまんねえ本だなあ!」
「なんか言ったらどうだ。この陰キャ!」
――バキッ!
「か、返してよ。お父さんから、貰った宝物なんだ…」
「メソメソしてんじゃねえ。悔しかったら、取り返してみな!」
―――ドゴッ!
父親から貰った「女神の図鑑」を奪われた挙句、ガキ大将に殴り飛ばされてしまう。
「あ、うぅ…」
服を泥だらけにしながら、尻餅をついてしまう歩。
へっぴり腰の彼に、悪ガキ大将がさらに圧をかけてくる。
「どうした?!やんのか!やらねえのか!」
「あ、あッ…わ~ん!」
歩少年は悔しさのあまり、彼らに背を向けて、その場から逃げ出してしまった。
「へ!ダッセエ野郎だな!」
「このクソ本は没収だ。残念だったな!」
「逃げるがいいさ。この臆病者!」




