217話「勇者ノ剣」
勿論、元凶の華白はその隙を見逃さず……
ルルナの右脇腹めがけて、中段横蹴りをお見舞いしてやった。
「完璧な女神さん。脇腹が、お留守かも! 」
華白の左脚がルルナの横腹にクリーンヒット。
「おげえッ! 」
ルルナの口から怪物のような呻き声が洩れ、彼女の体が宙へぶっ飛ばされる。
立て続けに、希望の女神は地面の上を転がり周り、顔面から地面へ追突してしまった。
「ハアハア、ハア」と肩を大きく揺らしながら、ヨロヨロと立ち上がるルルナ。
「毒の女神風情が、わたくしの顔に泥を塗るなんて……」
ルルナは「ハアハア、ハア」と肩を大きく揺らし、ヨロヨロと起き上がる。
「上等ですわ。そんなに、成敗されたいのなら……その願望! 成就させて差し上げましょう! 」
破壊された天ノ無双剣を投げ捨てて、滑らかな手を天へのばす。
「選ばれし勇者達よ。その才を我に捧げ、完璧な正義への道標となれ! 」
その祝詞を聞いて、雷昂が「まさか?! 」と声をあげる。
「召喚の祝詞だと! 『新たな神具を創造』するつもりか?! 」
天空がルルナの声に応じて、緩やかに姿を変えてゆく。
美しき情景の変化に、雷昂は見惚れながらも絶望した。
「天空そのものが、ヤツと共鳴しておる。これほどの主人公補正が、成し得るとは……」
一筋の光り柱がルルナの頭上を照らし、虹色の粒子が発生。
そして、虹色の粒子がルルナの右手に集い『一本の剣』へ変換されてゆく。
「光りが、聖剣に転生した……だと?! 」
希望の女神の奇跡に「クソッタレ! 」と毒づく雷昂。
「ヤツの聖剣を、命懸けで粉砕したというのに! これでは『ふりだし』だ」
「傲慢ですわね。天ノ無双剣は、氷山の一角にすぎませんわ♪」
新たなる神具(光りの聖剣)を手に、ルルナは勝ち誇った様子。
対する華白は微動だにもせず、最強武器を手にした相手を見つめかえした。
「これぞ『勇者ノ剣』。この宇宙に愛をもたらす、正義の具現化ですわ」
「中学生が考えたみたいな、肩書きかも」
「華白さん。そろそろ、アナタの挑発にも…飽きて来ましたわ」




