212話「三代目・毒の女神」
雷昂は、毒桜が『華白を全力フォローする展開』に胸の高鳴りを感じた。
「ならば、この狂った運命を掴みとれ。馬の骨……いや……」
馬の骨ではなく、正真正銘の名をぶっきらぼうに叫ぶ。
ーーその名はーー
「三代目・毒の女神! 華白隣!! 」
―――ドン!ーー
雷昂の叫びに応じて、周辺の毒花たちが爆発四散。
猛烈な爆発により、毒の聖花壇全域がグラグラと揺れ動く。
「なあ! なんですのお?! 」
……驚愕するルルナの目前には……
「馬の骨?! 」
毒の女神に転生を果たした『華白隣』が棒立ちしていたのである。
女神へ転生した彼女(華白)は、まるで別人。
一本一本の毛がエメラルドグリーンに変色し、後ろ髪のポニーテイルは緩やかに揺れている。端的に言うなら、今の彼女は『緑髪ポニーテイルの女神』だった。
――トク、トク、トクーーー
(や、やば…力が、無限に溢れ出してくる……)
「多分、これが……裏ルートかも」
心臓の鼓動を実感しながら、圧倒的な毒バフ効果を獲得している事を実感する。もはや、この力は毒人の能力など遥かに超越していた。
「確実に、明確に、絶対に…殺菌したはずなのに。こんなの……ありえませんわ」
正義の味方は、予期せぬヴィランの復活にうろたえてしまう。
一方、ヴィラン(華白)は正々堂々と立ち尽くしている。
「バイバイ菌は……まだ早い、かも」
「認めません! 認めませんわ! アナタのような負けヒロインが、毒桜に選定されるなどッ! 」
ルルナは『毒の女神』に覚醒した華白を睨み、発狂気味に怒鳴り散らす。
「毒人ごときが、神格化するですって?! そのようなイレギュラー! この宇宙に存在して良い筈がありませんわ! 」




