210話「負けヒロインは首無し人間?」
雷昂の両手足を切断するべく、ルルナの聖剣が容赦なく振り下ろされる。
……その瞬間……
何の前触れもなく『とあるイレギュラー』が発生した。
「嗚呼……毒、桜が……」
「さ、咲いていますわ。ありえません。このような絶望、このような異常……許されませんわ」
大木からエメラルドグリーンの光りが生み出され、色彩豊かな桜が枝木に実る。雷昂は、大木が『桜の木』に変わる工程を見届け、喉元を震わせた。
「数世紀もの間、寝ぼけていた毒桜が目覚めるというのか。まさか、歴史の特異点と出くわすとは……人生とは、奇妙なモノだな」
「毒桜よ。わたくしを拒絶して『勝手に蘇る』とおっしゃるのですか?! 」
二人は只々、毒桜が復活する時を見届ける事しかできない。
ところがどっこい、毒桜よりも異常な現象が二人の視界に飛び込んできた。
「……! う、馬の……骨ッ?! 」
雷昂が『首のない華白の死体』を指差し、声を轟かせてしまう。
ルルナも異常を察し、美しい顔面を真っ青にさせた。
「首を切断したはずなのに! 華白さんの死体がッ! 」
「「起き上がった?! 」」
そう、華白の首なし死体が、安物ホラー映画に出てくるゾンビのように、ヨロヨロと自力で起き上がってみせたのである。




