206話「女神継承」
自ら『愚かな選択』をする華白に、少女が冷たい声で警告をする。
「裏ルートが始まったら最後、アナタは永遠の命に拘束されてしまう。つまり、不老の存在として、この狂った世界と『永遠の時』を生き続けねばならないの」
「なるほど、この先には『永遠の孤独』が待ってるってワケだね。最悪過ぎて笑えるかも」
たとえ、永遠の孤独に苦しむ事になろうとも構わない。
華白は少女の手をさらに強く握りしめ、青い瞳に決意の炎を宿らせた。
「か、カケルの勇気に……感染しちゃったから! 」
少女は、腹をくくった愚か者(華白)を冷たい視線で見つめ「ふぅ」と短い溜息を吐いた。
「気持ち一つじゃ、何もかえられない。所詮、アナタは負けヒロイン。愛野カケルのような主人公でも、ルルナちゃんみたいな正義の味方でもないの」
揺るぎなき真実が、華白の心に淡々と突き刺さる。
「だとしても『0%に立ち向かう』と、言いたいの? 」
「う、うん。多分…」
「………なら、『臆病者の貴方』に、わたしの『魂』をバトンタッチしてあげるの」
「多分、君の力を貸してくれるって感じだよね?」
「その通り……蘇生が完了した後、アナタは以前の記憶を引き継いだまま、『新たな女神』として覚醒するの」
これからの展開について淡々と説明する少女。
そうしている内に、彼女の体がエメラルドグリーンの光りに覆われてゆく。
「ラストにもう一度、問うの。華白隣……アナタは、本当に諦めない? 」
「……うん」
そんな華白の決意を承諾し、少女は無表情のまま高々と宣言する。
「契約成立なの。『三代目・毒牙姫ノ命』華白隣」
少女の声が幻想世界に響きわたり、彼女の体を包んでいたエメラルドグリーンの光彩が拡散してゆく。
視界を覆いつくす程の光りに「あぅ! 」と狼狽える華白。
「ひ、光りがッ! 大きくなって?! 」
眩い閃光によって、華白の意識は丸呑みにされてしまった。




