195話「害虫の戦略」
「ここまで愉快なのは、久しぶりですわ。主に感謝します。これから、アナタを駆除できるのですから」
「やれるモノならやって見るがいい。三下女神が……」
瀕死の雷昂はヨロヨロと立ちあがり、ルルナの前に堂々と立ちはだかる。
小生意気な巫女幼女を見つめ、ルルナは眉間を強張らせた。
「すぐに終わらせるのは、芸がありませんよね? 存分に苦しんでいただけるよう……まずは、四肢を切断して差し上げましょう♪ 」
ルルナは氷のような表情を顔面に貼りつけ、雷昂の左右の太ももを睨み、聖剣をゆっくりと構える。
「まずは両足から♪ チクっと、しますわよ」
ところが、ルルナの攻撃よりも1テンポ早く……
「慢心したな! 阿呆が!! 」
雷昂が袖奥から札をドロー(引く)。
一枚の術札を、ルルナめがけて神速のスピードで叩きつけた。
投擲された術札は、すかさず空中で変身。
激しい魔術エネルギーを発生させつつ、紙(札)から『蛾の大群』に変身する。
――バサバサバサ!ーー
蛾の大群が慌ただしく飛び交い、ルルナの視界を妨害。
「害虫の……軍勢ですか」
蛾の群れに視界を阻まれてしまい、舌打ちをしてしまう女神。
「なるほど……『目くらまし』ですか。考えましたわね」
大量の蛾によって、ルルナの動きが1~3秒ほど停止。
加えて、ルルナの脇腹がガラ空きになった。
無論、雷昂はその隙を見逃さない。
「間抜けめ! 脇がお留守だぞ! 」
雷昂は、ルルナの脇下を鼠のように潜り抜けると……
相手の真横を通過し『とあるモノ』へ飛びついてみせた。
ソレは、荒神業魔との戦いの時、華白が落としてしまった「十弐式毒銃」だった。




