193話「クレーンゲームの景品は毒バフ人間?」
……その刹那……
「諦めるのは千年早いぞ。馬の骨が! 」
華白の頭上から、聞き慣れた『幼女の声』が罵倒してきた。
「ええ! この『ぶっきらぼうなロリボイス』て?! 」
目を点にして頭上を見上げる華白。
すると、巨大な蛾のシュルエットが、こちらに目がけて急降下してくる。
「が、蛾の怪獣?! もしかして、謹崎さん! 」
正解。頭上から颯爽と現れた刺客は、怪獣形態の雷昂そのものだった。
「フン。気安く『さん付け』するな! 」
蛾の怪獣(雷昂)がマッハの速度で急降下してくる。
続いて、雷昂(蛾の怪獣)は華白の元まで降下し、彼女(華白)の胴体を昆虫脚で鷲掴みにした。
「ちょっとッ!人の体をクレーンゲームの景品みたいに!」
「文句を垂れるな。このまま焼かれたいのか?! 」
乱暴に救出されながら、雷昂へ視線を投げる華白。
「怪我人のクセに、どうしてこんな所に? 無理しちゃダメかも」
「ほざけ。キサマの方が重傷だろうが。それに、今は口論している暇はない」
雷昂(蛾の怪獣)は、迫り来る虹の閃光を一瞥し、巨大な翼をアタフタと羽ばたかせた。
「間に合え! 」
蛾の怪獣(雷昂)が大きく急旋回し、上空目指して一気に急上昇。
すかさず、虹色の稲妻が華白と雷昂のギリギリ真横を焼き焦がしてゆく。
「あっぶなあ~。首の皮一枚、繋がったかも」
雷昂の乱入によって、ルルナの究極奥義を間一髪で回避できた、が……虹色の稲妻から発せられる光波が、蛾の怪獣(雷昂)の右羽を掠ってしまう。
――ジッ、ジュ~ーー
正義の光りによって、溶解してしまう雷昂の右翼。
「うッ、がああああああ! 」
「そんな、謹崎さん……掠っただけで、羽がドロドロにィ! 」
蛾の怪獣(雷昂)は華白を抱えたまま、飛行姿勢を大きく崩してしまい……遂には、毒花が咲き乱れる花壇の上へ墜落した。




