185話「愛と正義のセカイ」
「 わたくしは一切の暴力も振るわず、人間と荒神さまを『共倒れ』にさせる、という完璧なシナリオを描いていました」
ルルナは指先をピンと立て、毒森攻略作戦の真相を告白する。
「毒森の生態系を教え、コボルトとの戦い方を教え、荒神業魔の弱点を教え……欠陥品の神具を授け、情弱な人々に希望を与えましたわ」
オペラを奏でるように『地下の人々を騙した経緯』が唄われてゆく。
「軍隊と荒神さまが『共倒れ』になった後。彼の法術核を頂戴する筋書きでした、が……想像以上に、兵士さん達は無能でしたわ」
「め、女神さまのクセにィ、ハイエナが狙いだったの?! 」
命懸けで戦った兵士たちが無能の一言で切り捨てられてしまい、華白の胸が怒りでメラメラと燃える。
「まさか、コボルト一匹すら駆除できないとは……無能な連中のせいで、わたくし自ら出陣する羽目になりましたわ」
「ふざけてるかも。皆は、アナタの駒なんかじゃない」
駒という華白の例えに、ルルナの眉間がピクリと反応する。
「駒ですって? 自惚れていますわね。人類は、この地球を蝕むウイルスでしょう」
「う、ウイルス……」
「この惑星は、愛と正義を具現化した完璧な星ですわ。だからこそ『人類という名の病原菌』に侵食されている現実が許せないのです」
ルルナは荒神業魔の亡骸を踏みつけ、怒りに燃える華白を見下ろし、正義の味方としてのスピーチを高々と並べてゆく。
「地球上から人類という名のウイルスを消毒する……ソレこそが、わたくしの使命ですわ♪ 」
黄金の瞳を輝かせ、人類滅亡のシナリオを語る女神。
「ともに喜びましょう。全人類が消毒されたら、地球はウイルスの呪縛から解放され『完璧な世界』が訪れるのです♪ 」




