184話「英雄ごっこ」
華白は、この女神に「常人の道徳観」は通用しないと、自覚しながらも……
「もうちょっとだけ、聞きたいことがある、かも」
……あと一つ、残された『最期の真実』に踏み入れた。
「多分……20年前。伊吹町に『突然、毒森が現れた』のも、アナタの差し金だね? 」
ソレは20年前の分岐点。異界の毒森が、何の前触れもなく伊吹町に出現した『原因(黒幕)』についての追及だった。
「鼻が利きますわね。正解ですわ。わたくし自らの手で、この地上に『女神ゲート』を召喚して差し上げたのです」
「め、女神ゲート? 」
「端的に言うのなら、上級の女神だけが扱える『亜空間トンネル』ですわね。コレを用いれば、どんな世界(地上)も別次元へ転送できますのよ」
「……流れが分かった、かも」
(ルルナさんが『トンネルみたいなの?』を使って、毒森と伊吹町を繋げたんだ)
怪物に変貌させられた荒神業魔。
管理者を失い、暴走してしまった毒森。
地獄と化した毒森が、ルルナの手によって伊吹町へ転移させられた事。
華白の脳内で、謎のピースが組み合わさってゆく。
「ルルナさま……アナタは、毒森の毒霧で、街の人たちを全滅させるつもりだった。でも……」
「人々が『地下都市へ避難』したせいで、毒霧の脅威から逃れ……結果、わたくし自ら、動かざる負えなくなりましたわ」
「そッ! それから、アナタは……地下都市にあらわれて、救世主のフリをして、皆を騙した! 」
「フフ♪ 本当に、滑稽な人達でしたわ。1から10までわたくしの言葉を鵜呑みにして……これも、わたくしの才、カリスマ性あっての必然でしょう」
華白はギリギリと奥歯を噛みしめながら、『地下都市を支配した、ルルナの動機』について深堀する。
「腑に落ちないかも。なんで、わざわざ『救世主ごっこ』を? その聖剣で、地下へ逃げた人たちを成敗しちゃえば良かったんじゃ……」
「華白さん。わたくしは『希望の女神』ですわよ? 猿の血で手を汚してしまえば、英雄の経歴に泥がついてしまいますわ」
「…あくまで、自分の肩書きが大事ってワケ、だね」




