178話「全人類の勘違い」
只々、驚愕する事しかできない華白とは対照的に……
ルルナは顔色一つ変えぬまま、首を失った荒神業魔の死体へ歩み寄る。
「良い汗をかけましたわ♪ さあて、使命を果たすとしますか」
希望の女神は、黄金色の瞳で荒神業魔の『法術核』を確認した。
一方、華白は女神の様子を見守りつつ、心の中でガッツポーズする。
(なるほどぉ~そのピカピカの剣でトドメを刺す感じだ)
「る、ルルナさま。その水晶玉を壊せば……ソイツはイチコロかも! 」
分かりきったアドバイスに、ルルナは背中を向けたまま頷く。
「ご助言をどうも。確かに、この法術核を破壊すれば、未来は人類に微笑むでしょうね」
「は、はいぃ! 毒森が消えて、伊吹町に青空がもどって、みんなが助かるかも」
後は、荒神業魔の胸にある法術核を壊すのみ。それが達成されたら、この世界から毒森が消滅し、伊吹町は毒の支配から解放されるだろう。
(別に……わたしィが、荒神業魔をやっつけたワケじゃない。それでも、結果オーライかも)
自分の力でつかんだ勝利ではない、が……華白は嬉しかった。
今回の作戦で、多くの兵士たちが犠牲となった。
彼らの犠牲もルルナの助太刀のお陰で報われたのである。
「太陽が帰って来てくれるんだもん。みんなの犠牲も無駄じゃない……よね」
華白は満身創痍の体をリラックスさせ、肩の力を解いた。
「……カケル。わたしィ、あんまり役に立たなかった、けど……諦めなかった、よ」
するとルルナが、華白の方へ振り返り『聖人の笑み』で囁きかけた。
「……華白隣さん♪ アナタは『勘違い』をしていますわ」
優しくも掴みどころのない女神の笑顔に、どうしてか? 違和感を抱く華白。
「は、はへ? 勘違いって、一体……」
「鈍感ですわね。いいでしょう。その目に焼き付けてください!! 」
――グシャ!
ルルナが右手で荒神業魔の胸部を一刺し。
すかさず、法術核を荒神業魔の胸から引きちぎった。




