表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/245

15話「負けヒロインは1乙してしまいました」

 

(な、仲間がフルボッコにされちゃってる。わたし、どうすれば……教えて! カケル! )

「カケル、カケル…カケ、ルぅ…」


 弱々しくカケルへ助けを求めるが、そう都合よく『ショタ王子?』は現れず。代わりに、ズシィヤアア!という音が華白の上で鳴った。鈍重な斬撃音に驚愕し、条件反射的に目線を上げてしまう。すると、コボルトが一人の兵士を真っ二つにするシーンが広がった。


「ひィ、人がぁ~サイコロステーキにされて……フル装備の兵隊さんが、目の前で『乱切り』にされちゃうなんて~。センスのない悪夢かも……」


 どんなに目先の出来事を拒もうとも、現実は変わらない。


「痛てえええええ!腕がああああ! 」

「母ちゃあああああああン! 」

「あああああああああああああああああ! 」


 実力のかけ離れた一方的な大乱闘が繰り広げられ、コボルト軍によって兵士たちが次々と撲殺されてゆく。


 毒森北側一帯が血まみれになる中……

 華白は仲間の死体に紛れながら、ズリズリとほふく前進する。


「見つかったら、首をもぎ取られちゃう。石になって、気配を消して……逃げなくちゃ」


(わたしが死んだら『カケルの壁役』がいなくなっちゃう! 神さま、お願いします! どうか『逃走』するチャンスをお恵みください~)


 神にすがりながら、近くに転がっている兵士(死体)のバックを探ってみる。

 ガサゴソ、ガサゴソ……

「漫画とか、アニメだったら…こんなとき、スーパーアイテムがッ」


 華白の望みに応えるように『とある道具』が彼女の手に触れた。


「ッ?! 」


 ガスマスクのレンズ奥で青い瞳を見開き、その道具をバックから奪いとる。そのアイテムはスチール製の手榴弾で筒形の形状をしていた。華白は、いま手にある手榴弾をマニュアル教科書で予習したのを思い起こす。


「コレって確か、フラッシュグレネード? 」


 その通り、華白が兵士(死体)から頂戴したモノは対クリーチャー用の閃光手榴弾だったのである。


(とりあえず、コレがあれば……ピンチを切り抜けられる、かも)


 回収したフラッシュグレネード(閃光弾)を、一旦懐のポーチにしまってから……


「縮こまってもはじまらない。ギャンブルだけ、どッ。行動しなくちゃ」


 作戦を立てることもなく、アドリブ全開で立ち上がってみせる。

 勇気を出したのはいいのだが……運悪く、1体のコボルトとバッチリ視線が重なってしまった。


「ギィ、ガ」

「やばあッ! 馬鹿な事、しちゃった……」


 一歩一歩と…アプローチしてくる相手に圧され、華白は後退りしてしまう。


「…何なのぉ…コイツ。多分、他のコボルトと…絶妙にちがう、かも」


 そのリアクションは当然。何故なら、そのコボルトは……


「コイツ、全身が真っ赤……」


 皮膚甲殻は緋色の顔料でコーティング鮮やか。

 カミソリのような鋭い爪も、バラ色に染まっている。

 体の隅々まで赤一色の姿はまさに『真紅のコボルト』の名に相応しかった。


(相手がイレギュラーでも、ヒヨったらやられちゃう。反撃しなくちゃ )

「でも、一体どうすれば……わたしのIQじゃ、土下座くらいしか思いつかないかも」


(ま、まだカケルとも合流できてないし! 死ぬワケにはいかない。と、とにかく! )

「何でもいい。とにかく、足をうごかし、て! 」


 ブルブル震える足を引きずり、真紅のコボルトから逃走を試みる…が…


 ……ドス……


 華白の足が動くよりも先に、鈍い音が聞こえてくる。


「…?、はへ? 」

(おかしい、な~お腹かが、熱いかも)


「灼熱の感覚」が自分のみぞおちに広がって、喉元まで血が昇ってきた


「うぅ、ゲホッ。口から血? コレって多分、わたしィの……」


 ガスマスクの中で吐血しながら、視線を落してみる、と…


「わたしの、お腹…が?! ゲホッ」


 その通り、そこには華白の腹を貫く、真紅のコボルトの腕があった。


(コイツの動き、見えなかった…多分、わたしの腹を一瞬で貫いたんだ! )


「ヤバい…かも。あぁ、意識が」


 真紅のコボルトに腹を引き裂かれ、視界がグラリと傾く。


「ごめん、カケル。やっぱり……わたしィなんか、じゃ」


 華白は命が途絶える瞬間さえも、カケルの事が心配で仕方なかった。


(おねがい、神さま。どうか、カケルだけ……は)


 死ぬ瞬間まで、カケルの無事を願っていると……プツンと意識がブラックアウト。華白隣はなしろりんの意識は暗黒の底へ飲まれてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ