176話「女神無双」
「それでは一興♪ ウォームアップといきますわ」
ルルナは荒神業魔のディフェンスが崩れた瞬間を見逃さず、荒神業魔の左拳を一瞥すると、己が手にある聖剣を下から上へ一閃してみせた。
虹色の刀剣から「ピカッ! 」と閃光が立ち昇り、荒神業魔の左拳が灰と化す。
「✕〇✕、○○○○○○○○○○○! 」
(あ、荒神業魔の手が、秒で消し炭にされちゃった)
「圧倒的かも。これが『正義は必ず勝つ!』ってヤツ?!」
立て続けに、ルルナが聖剣の刃先を斜めにして荒神業魔の懐へ……
「さて、この地球上から、悪を『消毒』するとしましょう♪ 」
けれども、荒神業魔だってやられっぱなしではない。
「〇✕〇、○○○○! 」
荒神業魔は激昂しながら、背中から無数の触手を瞬時に生成。
「こ、コイツぅ! また、触手を一杯出して! 」
華白は襲いかかってくる触手を目視して、背後からルルナに警告した。
「ルルナさま! 油断禁物かも! ソイツの触手はチートですぅ! 」
……剣に変化する触手、斧に変化する触手、槍に変化する触手。
すべての触手が異なる凶器にシフト(変身)して、ルルナ一人に迫りゆく。
「フフ♪ 変化と進化を繰りかえす触手、ですか。小細工だけは神がかっていますわね」
ルルナは見下したかのように嘲笑い、一本一本の触手を分析。
「その程度の最強では、わたくしに『埃の一つ』すら付けられませんわ♪ 」
自分こそが格上なのだ! と唄うように宣告しながら、目にも止まらぬ神速の太刀筋で触手を切り落としてゆく。
――バスッ! バスッ! バスッ! ーー
……一斬、二斬、三斬……十、二十斬……
「は、早すぎィ。全然、太刀筋が見えない、かも……」
(コレが『真のヒロイン』の力?! 住んでる世界がまるで違うかも)
華白がルルナのチート能力に見惚れている内にも、切り刻まれた触手の残骸が宙を舞う。
両者の実力は歴然、七神ルルナは荒神業魔の何十倍も格上だった。




