170話「花畑のワンサイドゲーム」
(でも、ここまで来たなら! やるしかない……)
唇を噛みしめ、泥まみれの手で毒銃を握りしめる。
十弐式毒銃の照準を荒神業魔の胸(法術核)に合わせて、痺れる指先を引き金に乗せた。
「コイツの、法術核に風穴を開ければ……ワンチャン! 」
毒銃の引き金が起動。
一発の銃声が轟き、50口径の毒弾が回転しながら荒神業魔の法術核へ。
「この至近距離なら! 避けられない! 」
華白の宣言どおり、毒弾は荒神業魔の法術核に命中。
ところが、それと同時に「キーン」という軽い金属音が鳴った。
「……〇✕〇? 」
クズ鉄と化した毒弾が、荒神業魔の足元へポトリと落っこちる。
「はひィ! うそぉ~! 」
(法術核に当たったのに! 毒弾が、弾かれちゃったあああ! )
紛れもなく、毒弾は荒神業魔の急所(法術核)に命中した。
華白はうろたえながらも「荒神業魔の法術核」について、とある可能性を口にした。
「まさか?! コボルトをたくさん食べたからッ! 防御力がカンストして……」
荒神業魔は究極体へ進化したことにより、全身のフォートレス甲殻を限界値にまで突破。弱点である法術核さえも鉄壁にさせてしまったのである。
発砲した事によって、毒銃本体からシューと煙が湧き上がる。
「一発撃つたびに休憩を挟むとかッ! マイペースすぎるハンドキャノンかも」
(冷却中は、この鉄砲に頼れない。手札がカツカツだぁ~)
役に立たない毒銃片手に、困惑する頭を回転させようとする、が……
無論、荒神業魔は猶予を与えてくれるような相手ではない。
「〇△〇! 」
進化&強化した触手が、華白に襲いかかる。
―――ドガァ!
その一撃は理不尽の化身。
強烈な衝撃が、華白の無防備な腹を震わせた。
「あ! うぅッ! 」
華白の体が数十メートル先まで吹っ飛ばされてしまう。
続け様に、吹っ飛ばされたインパクトによって、毒銃が彼女の手から飛んでゆく。十二式毒銃は宙へ投げ出されて、荒神業魔の足元へポトンと着地した。




