169話「埋まることのないパワーバランス」
最終形態への進化を遂げ、荒神業魔が空にむかって咆哮してみせる。
「〇△〇、○○○○○○○○○○○○!! 」
「ッ?! なんて、咆哮……じ、地面がッ」
(叫んだ『だけ』で、花壇全体がアトラクションみたいに揺れてる、かも)
荒神業魔の殺気を感じ、華白は相手のほうが『数十倍も格上』だと察した。
「どどど、どうしよう……アイツの方が100万倍つよい、かも」
(ドーピング用の『猛毒アイテム?』があれば、抗える……けど~)
「でも、さっきの毒瓶が、最初で最後の切り札だったし」
現状、毒で体を強化する手段は残されていない。
「それでも! 逃げるわけには、諦めるわけにはいかない。死んでいった、みんなのためにも」
多分、100回くらい即死するな……と確信しながら、荒神業魔と対峙する。
華白は青い瞳を震わせながら、強靭無敵の壁(荒神業魔)を睨みつけた。
「どっちが、悪いヴィランなのか? 多分、白黒つけるかも」
そんな愚か者を見下ろし、荒神業魔は巨大な腕を振りあげた。
「〇✕〇、○○○○! 」
「く、来るッ! 」
(わたしィの頭を……その山みたいな手で、ペシャンコにするつもり?! )
華白は、荒神業魔の拳(強化された部位)を睨み、頭を両手で庇い防御態勢へシフト。
が、しかし……
ガラ空きになった彼女の横腹に、重々しい衝撃が衝突した。
「あッ、うぅ! わ、脇腹?! 」
予期せぬ一撃に吹き飛ばされつつ、横目で脇腹を殴りつけてきた物体を目視する。ソレは、荒神業魔が操る触手であった。
(でっかい拳は囮! 本命は、触手攻撃!)
「て、手の込んだ……フェイント、かも」
ダイヤモンド以上の強度を持つ触手が、華白の腹部にクリーンヒット。
―――――ゴキィッ!
「あッ……うッ……」
(あばら骨がぁ、粉々になっちゃった、かも)
あばら骨を粉砕されてしまい、崩れ落ちそうになる華白。
だとしても、灼熱の痛みが広がる脇腹を庇いながら、ガクガクの足で踏ん張りつづけた。
「やばい、かも。恐竜と蟻ぐらい、力の差が離れてる…」




