166話「無敵クリーチャーの逃走劇」
「どうしちゃったの? わたしィはただの木偶の棒。ホラー要素なんか、どこにもないかも」
華白の背後から、ドロドロとした異質な威圧感が湧き上がる。
続けて、魔王に追い詰められているような感覚が、三体のコボルトに圧をかけてきた。
数秒おくれて、蹴り飛ばされた10体のコボルトたちも、ヨロヨロと立ちあがる、が……彼らもまた、華白の奇怪な威圧感に震えていた。
「ギィ……」「ギッ、ギ……」「ギ~」
コボルトたちの衰弱した声で、決戦地(毒ノ聖花壇)が一杯になる。
「一回蹴っただけじゃ、復讐って呼べないかな。最低でも、あと100発は蹴らなきゃ……死んだ皆の無念を晴らせないかも」
氷のような声で囁きながら、エメラルドグリーンの瞳で一体一体のモブ敵たちを見つめる。華白の……彼女の眼差しは『死の宣告』そのもの。
コボルトたちは、圧倒的な戦闘力の差を味わってしまい、戦意喪失。
そして、我慢の糸が切れるように……
「ギィ、ええええええええええ! 」
コボルトたちは手足をバタつかせながらUターン。
ドタバタ、ドタバタ! と盗賊のように逃げ出してしまう。
「にッ?! 逃がさない! わたしィの復讐劇は序章かも」
華白は一歩遅れて、逃走する彼ら(コボルトたち)を追いかけようと試みる、が……
ーーガクンッーー
手足、肩、胴体……体の所々が重くなり、尋常じゃない疲労感が一気に押し寄せてきた。
「はへェ? 体が……」
片膝を落し、ゼエゼエと肩を揺らしてしまう華白。
モブ敵たちの背中を、唇を噛みしめながら見送ることしかできない。
「ウソぉ~指の一本すら動かない……かも」
華白の奮闘を笑うように、エメラルドグリーンの瞳が青い瞳へもどる。




