162話「切り札は奇妙な小瓶」
「このままじゃ、タコ殴りルート確定かも。な、なんとかしなくちゃ……」
華白はコボルト軍の殺意を細胞レベルで感じとり、敵勢力を事細かに分析した。
「なんでもいい、つけ入る隙は……」
数十体ものコボルトを目前にして、必死に頭を回転させる。
「毒の鉄砲で……不意打ち、する? いや……ダメかも」
冷や汗をダラダラ流しながら、毒銃のホルスターに触れてみる。
(この不良品、一発撃つたびに『息切れ』するし…)
十弐式毒銃は強力だが、単発銃ゆえに回転率が悪すぎる。ゆえに、大群との戦闘には向いていない。
「だったら~脳筋戦法は……」
後は肉弾戦しか、選択肢が残されていないワケだが、コボルト軍団に『毒のバフ効果なし』で戦うのは自殺行為に等しい。
(一応……毒人って、頑丈なのが取り柄だけど~)
「流石に、こんな大群に襲われたら、秒で生ゴミにされちゃうかも」
……せめて……
「何でもいい。ご都合主義の『毒』があればッ! パワーアップして、展開を変えられるかもしれないのに……」
そう考えた途端、華白の頭にピコンという音色が鳴った。
「あ! 謹崎さんから貰った『毒瓶』! 」
ポケットの中を慌てふためきながら開き『奇麗な小瓶』を取り出してみる。
一方のコボルトたちは、そんな華白の行動に「?」と首を傾げた
緊張した手つきで、小瓶の蓋を空けてみる華白。
「な、何なの…このカラフルでドロドロな液体…」
(赤いような、青いような……虹色色の毒薬なんて、聞いたことないかも)
「さ、流石……神さまをイチコロにしちゃう『超毒薬』。想像の斜め上をいってるかも」
華白は蠢く超毒薬を見て、思わず喉を震わせてしまう。
「ヤバそう……ど、毒人でも、死んじゃうんじゃ……」
飲むか否か?躊躇している間にも、コボルトたちが距離を詰めてくる。
「ギィエ……」
「ダメだあ。拒否権すらも、奪われてるかも」
華白は超毒薬の小瓶をギュッと握りしめ、そして……
「謹崎さん。もし死んじゃったら……う! 訴えるからあああ! 」
グイ、グイ、グィッ!
華白は神をも秒殺する超毒薬を、まるで栄養ドリンクのように一気飲みした。




