151話「熱狂的な追跡者」
二つの獲物を逃してしまい、鎌切龍が崖上で怒り狂うように暴れる。
「も、もう諦めて……アナタは普通のモンスターだから、ここは歩けないでしょ」
あながち、華白のアドバイスも的外れではない。
(毒の茨道って、モンスターから見ても地獄だし、ね)
この領域(毒の茨道)は普通の生物にとっては地獄そのもの。
鎌切龍がどんなに最強でも、容易に踏み入るのは自殺行為なのである。
「鎌切トカゲくん。アナタは、崖の上から涎を垂らす事しかできない」
華白はこれ以上『追われることはない』と確信し、崖上にいる鎌切龍をエメラルドグリーンの瞳で一瞥してみせた。
「アナタと『鬼ごっこ』してるヒマないかも。バイバイ」
ーーところがーードンッ!
鎌切龍が怒りを爆発させ、崖上から荒々しく大ジャンプ。
「はひィ?! ウソ!」
(か! 鎌切トカゲくんが、雑にジャンプして……)
鎌切龍が着地して、毒の茨道全体がドスンと振動してしまう。
鎌切龍は毒人でもないのに、自ら毒フィールド(毒の茨道)に踏み入った。華白は、その狂気を目の当たりにして、絶句することしかできなかった。
「頭のネジが飛んでるかも、自分から毒地獄を訪問するなんて! 」
ブーメラン発言を吐きつつ、鎌切龍に背を向け、生い茂る『毒蔦の道』ひたすら歩き続ける。
「ああ、もうッ! 歩きにくい、かも!」
(毒の棘蔦に足が絡みとられちゃう。一歩進むのもハードモードかも)
モタモタと前進する華白の背を、鎌切龍が怒涛の勢いで追跡。
ジャキン! ジャキン! ジャキン!
右手の大鎌で立ち塞がる棘蔦を切り伏せながら、一直線に突っ込んでくる。




