149話「愚痴&ダイブ」
華白は、雷昂をおんぶしたまま、崖上から『毒棘の茨道』を一望する。
30mほど下の広間には、膨大な量の毒棘の蔦が繁殖。
蔦のトゲトゲは総じてナイフのように鋭かった。
「逃げた先が、たまたま毒の茨道?! 奇跡的に不幸だねえ! 」
……その上……
「ここって、崖の上ってヤツ? 」
(下のフィールド(毒の茨道)まで、三十メートルくらい高度がある、かも)
崖上+毒の茨道。
凶悪環境の組合せに、華白は心の底から戦慄してしまった。
されど今は、1秒たりとも弱音を吐く猶予はない。追跡者の鎌切龍が、辺りの樹木を切り払いながら、華白の前に荒々しく乱入してくる。
「前は、毒の茨道。後ろは、鎌切トカゲくん。最高に充実してるかもぉ! 」
……さあ、どうする?
(この崖からダイビングする? そんなの自殺行為かも)
「…だったら、素直に『鎌切トカゲくんと戦う』のは? 」
背中にいる雷昂の両脚をギュっと握りしめ、鎌切龍を見上げる。
「謹崎さんを『おんぶ』しながら、こんな怪獣と戦う? 人生、そんなに甘くない……かも」
2択の選択に挟まれている間にも、鎌切龍がジワジワと距離を詰めてくる。
「逃げた先が『毒の茨道』って、どんな確率なのよぅ」
ヤケクソ気味に吐き捨てた時、とあるキーワードが胸に引っ掛かった。
「毒の……茨みち。毒……そうだぁ! 」
インスピレーションが湧き、正気とは思えない『狂気の突破口』が閃く。青い瞳をブルブル震わせ、崖上から下に広がる『毒の茨道』を見下ろした。
「わ、我ながら……人間の発想じゃないって、自覚してるけどぉ~」
鎌切龍が2~3m後方、鎌攻撃の射程範囲まで接近。
もはや、一秒たりとも迷っている時間はなかった。
ーービュン!ーー
鎌切龍の大鎌が、華白と雷昂めがけて振り下ろされる。
「もう! さいていいい! 」
一方の華白は腹をくくり、雷昂をおんぶしたまま崖の上から飛び立った。
――スカッーー
華白が崖からジャンプした事によって、鎌切龍の大鎌が虚しく空振ってしまう。




