表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/245

12話「鉄壁のモブ敵」

 

 甲殻人型クリーチャー『コボルト』

 身長175㎝、体重90㎏。

 外殻皮膚・フォートレス甲殻は絶対防御のディフェンス力を発揮し、日本刀よりも鋭利な爪でいかなる物体をもバターのように引き裂く。ギラりと煌めくツリ目の眼差しは、尋常ならぬ殺意に満ち。標的にされたモノは、例外なく惨殺されてしまう。この人型怪物こそ、10年前の第一次・毒森攻略戦で大量の兵士たちを虐殺した元凶だった。


「ギィイイ……イ」


「あ、あ……あ……殺意パロメーターが振り切れてる、かも」


「多分、無駄かもしれない、けど……逃げなくちゃ」


 頭では分かっているのに……


「足が、くすんで……動けない。一歩が遠い、かも」


 ガスマスクの中で顔面蒼白になる華白。


「ギィ……エ」


 コボルトは右手の爪をキラリと光らせ、獲物(華白)へ距離を詰める。


「はあ、ハア、ハアッ! 」

(信じられない……アイツの爪、ダイヤモンドみたいに輝いてる。あ、あんなので切られちゃったら! )

「す、スライスチーズになっちゃう、かもお! 」


 ……と言っても、この窮地から逃れる術はなく、もはや死を覚悟する事しかできなかった。


「ごめんね。カケル……」


「ギィア! 」


 そして、コボルトの爪先が華白の首へ定められた、その時……


「毒だらけの森でナンパしてんじゃねえ! カメ野郎が! 」


 デリカシーのないオッサンの声が、毒木の裏側から怒鳴りかけてきた。華白は聞き覚えのあるオッサンボイスに、青い瞳を思わず見開いてしまう。


「大尉?! 」


 合わせて、大尉が木陰から飛び出し、アサルトライフルでコボルトを迎撃してみせた。


 ドッ!ドドド!

 すべての弾丸が、コボルトにヒットするものの……


 カン、カンカンカン、カンッ

 すべての弾丸が、コボルトのフォートレス甲殻に容易く弾かれてしまう。


「ちっ、化物が。愛嬌0だな。全弾ヒットしたってのに、涼しいツラしてやがる」


 コボルトの平然とした立振る舞いに、華白は絶望することしかできない。


「そんなあ~。あんなに撃たれて、埃すらもつかないなんて。 ひょっとして……多分、フォートレス甲殻って戦艦よりも頑丈な感じィ?! 」


「火力が足りねえんだ。オレ一人じゃ、役者不足か! 」


 大尉はアサルトライフルを構えたまま、戦況を分析しつつ、棒立ちする華白へ呼びかける。


「ノッポ嬢ちゃん! 死にたくないなら、オレの後ろで震えてな! 」

「は、はひィ~」

 華白は大尉に言われるまま、彼の後ろへそそくさと身を潜めた。続けて、他の兵士たちがゾロゾロと駆けつけてくる。


「大尉! ご無事ですか?! 」


 7人の兵士たちが集い、アサルトライフルの抱えながら、コボルトを警戒する。


「毒霧の中だってのに、ピンピンしてやがる。気持ち悪いバケモノだぜ」

「毒ガスにも耐えられる甲殻皮膚……か、この目で実物を見るのは初めてだ」


 大尉を中央にして、横一列の陣形を組む兵士たち。

 華白は、その一歩後ろで息を殺して見守ることしかできない。


(向こうは丸腰の怪物が一人。こっちは銃をもったエリート兵が8人。この戦力差なら、勝利の女神さまが微笑んでくれる、かも)


 心強い増援に安心するが……残念ながら7人の兵士の中に、カケルの姿は見渡らない。


「でも、この中に……ショタ男子は……カケルはいない」

(多分、カケルの事だから、森の中で迷子になってる感じかも)

「こ、地獄に迷子センターなんかあるワケないし、どうしよう……」


 そんな風に幼馴染の心配をしている間にも、コボルトが一歩一歩と正面から接近してくる。


「こっちには鉄砲があるのに! まっすぐ歩み寄ってくるなんて! 頭のセーフティーが故障してるかも」

「おったまげる必要はねえさ……ノッポの嬢ちゃん。奴らには『恐怖』とかいう機能は、そもそも備わってねえからな」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ