145話「詰みのオンパレード」
「ヤバ…き、謹崎さん! しっかりして! 」
けれども、雷昂は「………」と沈黙するだけ、その瞳が開かれる事はなかった。
華白と鎌切龍の距離は5~6m。
「幸い、鎌切トカゲくんは、わたしィに気づいてない。だったら……」
対抗策を考えている間にも、鎌切龍が捕食対象(雷昂)を睨み、右手の大鎌を振り上げる。
続けざまに、鎌切龍は殺意の赴くまま、大鎌を雷昂めがけて振り下ろした。
……が、その刹那「ドン! 」と一発、重々しい銃声が鳴った。
重厚感のある銃声が森を揺らし、鎌切龍の右手が木端微塵に爆散。
「……ッ?! 」
同時に、鎌切龍の右手(大鎌)がド派手にぶっ飛んでしまう。
「多分、命中……かも」
華白は十弐式毒銃を構えたまま「ハァ、ハァ…」と呼吸を荒げた。
即ち、華白が毒銃で鎌切龍の右手(大鎌)を撃ち抜いたのである。
「ッ!……!!! 」
鎌切龍が絶叫している隙に、華白は雷昂の元へ慌てて駆けよる。
それから、手を雷昂の背中へ回し、彼女(雷昂)の肩をユサユサと揺すった。
「起きる時間かも。こんな所で昼寝してちゃ、命が幾つあっても足りないよッ」
…にも関わらず、雷昂の瞳は閉じられたまま。
「…………」
(謹崎さん。全然、起きる気配がない…かも)
そうグダついている間にも、鎌切龍がボタボタ血を流しながら、二人(華白と雷昂)の方へジリジリと迫ってきた。
「落ちて、爆発して、腕を吹っ飛ばされて、散々ボコされても! まだ、殺し合うっていうの?! 」
鎌切龍は二人の前に立ち、全身血塗れ状態で君臨。
もう片方の大鎌(左手)を掲げ、破壊対象(華白)へ殺意の眼差しを向ける。
(つ、つぎの攻撃が、来る感じだ~。よ、避けなくちゃ…)
しかし、相手の攻撃を避けるには、雷昂から離れる必要がある。
「ダメだ~わたしが、ここから離れたら……謹崎さんが、標的にされる」
この状況で雷昂から離れたら、鎌切龍は彼女(雷昂)に牙を向けるだろう。
要するに、今の華白は……
「一歩も、うごけない……かも」




